指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第47回は「連戦で磨かれる選手の適応力」について。
【写真】ISLに初参戦した東京フロッグキングスの北島康介GM
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ハンガリーのブダペストで開かれた競泳の国際リーグ(ISL)に参加した約1カ月の遠征から11月17日に帰国、選手たちは12月3~6日の日本選手権に向けて調整を続けています。
コロナ禍で4月から延期になった日本選手権は、初めて五輪会場の東京アクアティクスセンターで開催されます。無観客で行われますが、夕方の決勝は連日、NHKでライブ放送されます。ぜひ多くの人に見ていただきたいと思います。
21、22日に決勝があったISLは、米国を拠点にするカリ・コンドルズが優勝しました。北島康介GMがチームを編成した東京フロッグキングスは準決勝敗退でしたが、海外の選手と同じチームで戦った経験は日本の選手たちにとって大きな刺激になりました。
副キャプテンとして女子をまとめてくれたリア・スミスは、米国代表でリオ五輪女子800メートルリレーの金メダルを獲得した自由形の実力者です。独自の応援のやり方を考えて、チームを盛り上げてくれました。
大学で様々な人種の人たちと交流ができて多くの学びがあったと言います。今回は日本人中心のコミュニティーでどんな経験ができるか楽しみだったそうです。選手との会話で「私は競泳が好きで楽しいから続けている。あなたはなぜ続けているの?」といった質問もしていました。レースに出てスピードを磨くだけでなく、海外の選手たちとの交流を通して自分の幅を広げたいという目的意識がはっきりしていました。
一日に複数のレースに出場することも多いISLでは、疲れがたまる中で気持ちを奮い立たせる必要があります。チームの外国選手とのコミュニケーションも大切です。いつもと違う状況でチームとして戦った経験は、今後に生きてくるはずです。