「インタビューで『作品を選んだりはしない』とも語っていましたね。基本的に、出演オファーがあってスケジュールが合えば大体受けるそうです。また、色々な役を演じる中で意識していることについては、『なるべく人の言うことを聞こうというくらい』とも。そんな仕事に対する姿勢も飄々とした感じがありますよね」(同)

■怪しい不動産屋から町中華の店主まで

「半沢直樹」で脚光を浴びた江口だが、以降も取り巻く環境はあまり変わっていないと本人が言ったこともある。友人・知人から「(半沢以降)変わったでしょ?」と言われるそうなのだが、自身の身近な人はドラマをあまり見ないので、本当に何も変わらないとインタビューで話していた。掴みどころがなく性格が分かりにくいからこそ、女優としても「あの人はこうだ」と定義しづらい。ゆえに、どの役を演じてもその作品のカラーに馴染むので、自然と半沢の印象が薄まっているのかもしれない。

 ドラマウォッチャーの中村裕一氏は、そんな江口の魅力についてこう分析する。

「“変幻自在”とは、まさに彼女のためにあるような言葉。近年だと吉高由里子主演のドラマ『わたし、定時で帰ります。』では主人公行きつけの中華料理店のクセの強い中国人店主、亀梨和也主演の映画『事故物件 怖い間取り』では積極的に事故物件を紹介する怪しい不動産屋、懐かしいところではオダギリジョー主演のドラマ『時効警察』の個性的な警察官・サネイエなどなど。どの役も言われて見ると思い出す、それでいて記憶の片隅にしっかり残っている女優です。良い意味で“いかにも”な女優感がなく、派手さはなくても抜群の安定感があります。映画やドラマの出演が途切れないことからも、共演者やスタッフからの信頼が厚いのでしょう。『半沢直樹』でも共演した怪優・柄本明が座長を務める劇団東京乾電池に現在も籍を置く劇団員ですから、演技力や表現力は折り紙つき。これからも息の長い活躍を続けることは間違いないでしょう」

 幅広い役を演じ分ける名バイプレイヤーと言っても過言ではない江口。知名度も高まり、個性派女優としてますます存在感を放ちそうだ。(丸山ひろし)

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