住宅ローンを払えない場合、銀行に相談すれば、まず返済条件の変更による一時的な猶予策を提案されることが多い。ただし、返済期間を延長しても、返済を始めたばかりだと月々の支払額はあまり減らず、収支改善しないこともある。

 だが、一定期間利息のみを支払うことにし、元金返済を先延ばしにすれば、返済額を劇的に減らせる。ただし、この猶予策には期限があり、それは概ね6カ月ほどだ。住宅ローンの支払いに窮し、6月頃に銀行に相談して返済猶予になっていた人々は、早ければ年末、あるいは21年年初から春先にかけて元通りの返済に戻すか、後述する「任意売却」かの選択を迫られることになる。

 また、前出の49歳の男性のように、年齢や収入などが理由で金融機関の審査が通らず返済期間延長などを断られるケースもある。通常、返済を2~3カ月滞納すると金融機関から「督促状」が送られる。こちらも6カ月滞納すると「競売開始」の通知が届く。一般的に競売価格は市場価格より割安になる。競売にかけられる前に、ローンが残っている状態で住居を売却して、ローンを清算する方法もあり、「任意売却」と呼ばれる。

■任意売却の相談が急増

 任意売却にはメリットもある。自分の意思で売却活動を進めることができるので、市場価格に近い価格で取引できる。競売と比べ、一般に3割近く高い値がつくという。身軽になるので、ローンを清算し再スタートを切りやすい。

 任意売却を専門に行う不動産会社「明誠商事」(東京都)の飛田芳幸社長によると、住宅ローンが払えなくなったという相談は、8月以降、急激に増えた。

「任意売却の相談だけで月30~40件あり、以前より10件近く増えました。30、40代からの相談が多く、業種はコロナ禍で打撃を受けた建築業や観光、飲食関係など幅広いです」

 すでに住宅ローンを滞納してしまった人にとっても、競売にかかるか、任意売却かを選ぶ期限の6カ月はやってくる。

「経営が悪化した会社も多く、冬のボーナスが減るという人は少なくない。年末にかけ、住宅ローンが払えなくなるという人はさらに増えると思います」(飛田さん)

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