福山:このタイミングで自分と音楽の関係性をもう一度見つめ直したいと思いました。でも、これが結構しんどい……。楽しんで曲を作る方もたくさんいらっしゃいますが、僕はいまだに苦しみのほうが大きい。もうひとりの自分がそばに立って、「お前は真実を告白しているのか?」と尋問してくるような感じで(笑)。
——福山は、「僕にとってソングライティングは、セルフカウンセリングのようなもの」と話す。曲を書くことは苦しいが、自身を救済するのもまた音楽だ。
福山:なんでこんな苦しいことをずっとやっているのか、自分でも不思議なんですけど。どうやら僕は幸福感を得にくい体質のようで……。「何を贅沢(ぜいたく)なことを言ってるんだ」と、お叱りを受けるかもしれませんが。でも、金品で満たされる、人と話して満たされる、表現で満たされるって、実は全部バラバラで。物質的に満たされていても、精神的な充足はなかったりする。僕の中から違和感や生きづらさといったものが消えない限り、音楽を作り続けていくんだろうなと思います。終わりのない修行というか。一体、いつになったら楽になるんだよ?って思いながら(笑)。
(ライター・澤田憲)
※AERA 2020年12月14日号より抜粋