眞子さまの結婚問題が関心を集めている(c)朝日新聞社
眞子さまの結婚問題が関心を集めている(c)朝日新聞社
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作家の北原みのりさん
作家の北原みのりさん

 眞子さま結婚問題が世の中の関心を集めている。作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、フェミニストの視点から日本の皇室の制度について考える。

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 今の皇后陛下の結婚が決まったとき、田嶋陽子さんの祝福がフェミニストの間で話題になったことがある。田嶋さんは、キャリア志向の女性が皇室に入ることで、皇室も、女性の社会的地位も変わるのではと喜びの声を述べたのだった。それに対し、皇室はそんなに甘くないし、そもそも差別的な天皇制に無自覚すぎない?と、田嶋さんへの批判の声がアカデミアのフェミからあがったのだった。

 あれから約30年。確かに田嶋さんは甘かったのかもしれない。「外交官は一生の仕事」「家庭と仕事は両立させたい」と一般人だった小和田雅子さんはそう話していた。雅子妃が雅子妃であり続けた27年間、小和田雅子さんとして生きたかもしれないもうひとつの人生の物語は、チラチラと影のように雅子妃につきまとったのではないか。そしてそれは、この国を生きる女性たちの多くが知る感覚でもある。

「こんなはずじゃなかったのに」

 個の力じゃどうにもならない制度や法律の壁、ミソジニーの沼、誰かが決めた「女性の幸せ」と乖離する私の本音。日本の女性の生き難さの本質は、雅子妃の27年間、あまり変わらなかった。

 2006年に紀子妃が男児を出産した日のことは、忘れられない。あの時メディアは、生まれたばかりの男児をすぐに皇位継承者として報じていた。当時の小泉純一郎政権は女性天皇論を議論していたが、男児出産で議論はあっという間に世論も含めて終息し、さらにその年に発足した安倍晋三内閣では、女性天皇議論を正式に終わらせた。「とにかく長男を」の信仰、そのために苦しめられる「嫁」という立場の女性の姿は少なくとも21世紀の都心のスタンダードでなくなったが、「伝統」という名のもとに、問答無用の性差別が東京の中心で継続していく絶望を味わった。

 今、眞子内親王の結婚が大きな話題になっている。雅子皇后とは、何もかもが違う結婚だが、これも皇室の女性の生き方を象徴するものにみえる。小和田雅子さんは「皇室に入る」結婚だったが、眞子内親王の場合、「皇室を出る」結婚だ。家を出るために結婚する、という女性は、現代も決して少なくない。むしろ過干渉な両親のもと、女の子だからと自立を許されず、結婚する以外家を出る手段がなかったという女性の話など、今の社会にもいくらでもある話だ。眞子内親王が“この人との結婚以外はない”と思い詰めるのも、人生を劇的に変えるために結婚以外の選択肢がない人であればこその必死さだろう。

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