高齢者がキックボクシングとはにわかに信じ難いが、実践者がいるのは厳然たる事実。東京大学大学院総合文化研究科で身体運動科学が専門の中澤公孝教授に話を伺った。
「キックボクシングといっても、実際に対戦するわけではありません。全身を動かせる運動としてとらえられますし、バランストレーニングにもなります。なので、シニアでも体に不自由な部分がない人ならキックボクシングはできるはずです」(中澤教授)
パンチやキックは日常生活にない動きで、背中や太ももなどの大きな筋肉を動かすのもいいと指摘する。
また、20~30分も体を動かすと、適度な有酸素運動も兼ねることになるという。
「パンチやキックで爽快な気持ちになるのもいいですね。リハビリでも本人のやる気を引き出すのが一番大変なように、人はいくら体にいいとわかっていても、単純な運動ではやる気が出ません。体によくて楽しいものを見つけることが鍵です」(同)
平林さんと鹿島さんも、自発的に「やりたい」と言い、生井さんはそれに応える形で、マンツーマンで指導していた。
二人は、人は何歳になっても可能性があり、筋肉もつけられることを、証明してくれている。(ライター・吉川明子)
※週刊朝日 2020年12月18日号