新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛生活で杖が欠かせなくなった89歳の男性がいた。しかし、行きつけの整骨院でキックボクシングを習い始めたところ、数カ月でみるみる動けるようになり、杖も不要になったという。奇跡のように見えるが、実は地道な運動の積み重ねでもあった。
今秋、ツイッターである動画が話題になった。89歳の男性がグローブをはめ、パンチを繰り出している様子で、数カ月前と比較した動画では、パンチのキレが明らかによくなっていた。
一連の動画を投稿したのは「豪徳寺接骨院Palledo~パレード~」(東京都世田谷区)の生井宏樹さん(37)。元キックボクシングJ-NETWORKライト級1位で、2017年から同院を営んでいる。
開院当初から、整骨院のメニューとは別に、「パーソナルキックボクシング」も掲げていた。
「需要はないだろうと思いつつ、自己紹介代わりと思って。患者さんで興味を持ってくださった方に指導していました」(生井さん)
平林小枝子さん(77)もその一人で、指導を受けて2年になる。
「道の凸凹でつまずきそうになるなど、足が思うように動かないことがあり、敏しょう性も筋力も相当落ちたと感じていました」(平林さん)
股関節にも痛みがあり、生井さんの整骨院に通っていたが、キックボクシングも習えることを知り、敏しょう性を高めることができるのではないかと思い、やってみたいと申し出た。
「年配の希望者は平林さんが初めて。転倒に気をつけつつ、少しずつ体を動かすところから始めました」(生井さん)
整体やストレッチなどを続けながらパンチを打ち始め、足腰がしっかりしてきたところでキックにも挑戦。すると、平林さんの動きはみるみる変わっていった。
「体を動かしていると頭も使えるようになって、『生きている!』と感じるようになってきました。とても楽しくて、ストレス発散にもなっています」(平林さん)
生井さんにとっても、平林さんへの指導は驚きと発見の連続だった。