旅行作家の下川裕治(しもかわ・ゆうじ)さん
旅行作家の下川裕治(しもかわ・ゆうじ)さん
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小骨の多い魚の料理。日がたつにつれ、冷めた料理が届くようになったという(提供)
小骨の多い魚の料理。日がたつにつれ、冷めた料理が届くようになったという(提供)

「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。第38回は、コロナ禍のカンボジアについて。

【写真】隔離ホテルで出された実際の食事はこちら。贅沢は言えないが…

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 カンボジアから送ってもらった動画を観ながら悩んでしまった。中国からカンボジアへの投資額は多い。その蜜月関係を、「カンボジアはもう中国の属国」と批判する人もいる。しかしこんなホテルまでできているとは……。

 カンボジアもコロナ禍である。感染は抑えられていたが、11月に訪問したハンガリーの外相の陽性が判明。カンボジア農水省の次官や警備員など4人の感染が確認された。

 カンボジア入国は、それほど厳しくはなかった。労働ビザは必要だが、空港でのPCR検査で陽性者がいなければ、そのフライトの乗客は隔離されなかった。しかしハンガリー外相の訪問を機に一気に厳格化。全員が2週間の隔離に。カンボジアに帰国しようとしていたIさんにも隔離が課せられることになった。

 隔離ホテルを選ぶことができず、空港からのバスが着いたのはTian Yi International Hotel。外国人は全員、このホテルで隔離されるようだった。中国の企業が建てたホテルだった。

 部屋に入り、テレビをつけてみた。案内は中国語のほかに英語の説明もあったが、観ることができるのは中国のテレビ局だけ。カンボジアのテレビ局の番組すら観ることができなかった。映画もすべて中国語に吹き替えられていた。

 翌日、ホテルのスタッフがカンボジアの保健省の書類を手にやってきた。しかし中国人で英語が通じない。結局、どうすればいいのかもわからなかった。

「ここは中国か」

 意図を伝えることができす、部屋を出ていくスタッフを見送りながら、Iさんはつぶやくことになる。

 隔離ホテルなので3食がついている。ドアの前に置かれた食事を口に運びながらため息をつく。

「ここは完全に中国だ」

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中国の食堂で出るような料理 毎日3食は……