東尾修
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トライアウト最終打席で左前安打を放ち、跳び上がって喜ぶ新庄剛志 (c)朝日新聞社
トライアウト最終打席で左前安打を放ち、跳び上がって喜ぶ新庄剛志 (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、各球団が新庄剛志氏の獲得に慎重な姿勢を見せた背景と巨人・菅野智之選手の大リーグ移籍について語る。

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 人間誰しも難しい選択を迫られることがある。野球界でも難しい選択になるなあ……と感じていることがある。

 まずは日本ハム時代の2006年限りで現役を引退していた新庄剛志を補強する球団があるかということである。新庄は12月7日に神宮球場で行われたトライアウトで3打数1安打1四球だった。第4打席で左前へ安打を放ったが、打ったのはチェンジアップ。直球を力強いスイングではじき返した打球が見たかったと感じた。ただ、1年ちょっとのトレーニングでここまで戻したことには素直に拍手を送りたい。私も映像を見て感動した。

 年齢によって一番は動体視力がどうかだろう。10年以上のブランクがあって、バットに当てること自体がすごいという見方はできる。ただ、新庄が戻ろうとしているのは、プロ野球の舞台である。今季戦力外となった選手と同じレベルの野球が求められるわけではない。

 球団の目はシビアである。来年1月で49歳になる選手を、この1日だけで判断し、獲得できるだろうか。育成契約なら、支配下選手の枠を使わなくて済むという意見もあるが、新庄剛志という実績を積んだ選手を、育成選手と同じ扱いにできるだろうか。各球団ともに「客寄せパンダ」として呼ぶこともしないはずだ。それは、新庄という男の功績を考えればこそ、である。

 そして今の時代、各球団ともに「育成」の重要性が問われている。そういった球団の中長期的ビジョンの中に、新庄を加えて効果的かどうかも加味すると、どうだろうか。各球団ともに獲得には慎重にならざるを得ないはずだ。

 そしてもう一つ難しいと感じたことがある。巨人の菅野智之だ。菅野は大リーグ球団と交渉するため、ポスティングシステムの申請を行った。本来なら、スッキリした形で大リーグと交渉し、移籍したいところだが、ここで菅野自身に難しい選択が迫られている。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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