――いつ頃から賞を獲れたらいいなと思っていましたか。
ずっと思っていました。それは、賞が欲しいということではなく、普通の作家は、新人賞を獲ってから作家になるのが通例ですが、自分はデビュー作の『ピンクとグレー』(KADOKAWA)から書かせてもらっていて、それはジャニーズ事務所のタレントだからという立場で本を出させてもらっている。そうした引け目というか、文学界、小説界におじゃましているという感覚があったので、ちゃんと作家と名乗っていいのかという迷いがずっとありました。直木賞候補となったことで、多少認めていただけたのかなと思っています。
――ジャニーズ事務所だからということに引け目を感じることがある中でも、書き続けることができるパワーや思い、支えはどこにあるのでしょうか。
初めて書いたときは、グループに対して何かできないかという思いや、自分自身を試してみたいという思いがありました。続けてこられたのは、たくさんの方、ファンの支えもありましたし、書店員の方の存在もあります。
『ピンクとグレー』刊行時に書店回りをした際に、「1作目は応援できるけど、書き続けないと応援し続けられない」「応援し続けたいから、書き続けてください」と言われたことが印象的でした。僕自身も、「いっちょかみした」とは思われたくなかった。本気で小説を書く覚悟は伝えたいと思っていたので、続けることが自分を受け入れてくれた小説界に対する恩返しかなと。続けているうちに、すっかりルーティンというか、いつしか小説を書くのが当たり前の生活になっていました。
(構成/編集部・福井しほ)
※AERAオンライン限定記事
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