「高齢者」という理由だけで優遇する政策は他にもある。公的年金は、他の所得とは別建てにして、特別に所得控除を認める制度だ。結果的に減税となる。普通の若者には年金がないから、この優遇は受けられない。高齢者だけ優遇される根拠はなく、直ちに見直すべきことは誰もがわかっている。

 年齢と社会保障のデカップリング(切り離し)は喫緊の課題だ。もちろん、年齢に関係なく、本当に困っている人たちを漏れなく把握し、その人たちに手厚く支援の手を差し伸べる政策をセットで実施しなければならない。

 菅義偉総理は、支持率低下を背景に、待機児童対策やコロナ対応で派遣される医師・看護師の処遇向上策を発表したが、全く場当たり的で、「人気取り」のにおいがプンプンする。こんなやり方ではなく、例えば、今回も見送られた金融所得の分離課税の廃止など金持ち優遇策の廃止を反対があっても断行し、他方で、社会保障給付を「真に必要としている人」に手厚く、確実に届けるという包括的な「改革」の姿は見えてこない。これでは、「菅改革はまがい物」だと批判されても仕方ないだろう。

週刊朝日  2021年1月1-8日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)など

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