古賀茂明氏
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支持率急落でピンチの菅首相(c)朝日新聞社
支持率急落でピンチの菅首相(c)朝日新聞社

「高齢者」は何歳からか。日本老年学会と日本老年医学会が「高齢者は75歳から」とする提言を出したのは4年前の2017年1月。多くの分野で「高齢者=65歳以上」という考え方が定着していたので、当時はセンセーショナルに取り上げられたが、今では、それほど驚くような話ではなくなった。

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 例えば、年金は原則65歳受給開始だが、受給開始を遅らせる限度は、70歳までから75歳までに引き上げられる。政府は、早くも、何とかして75歳受給開始を増やそうとしている。75歳までは「高齢者」とは認めないと言っているかのようだ。

 さらに、政府は、75歳以上の「後期高齢者」が医療機関で支払う窓口負担割合について、単身世帯で年収200万円以上の人を現行の1割から2割に引き上げることを決定した。75歳以上でも一律に「高齢者」として優遇するのはやめるという新たな領域に一歩踏み込んだということになる。75歳以上は「特別扱い」という「常識」を変えるのだから、当然反発も強く、大きな議論になるだろう。

 一方、「出生数初の100万人割れ」が話題になったのは、16年末のこと。同年の出生数見通しを厚生労働省が発表した時だ。その後は減少傾向に拍車がかかり、19年が86万人。20年は84万人台という予想もある。支えられる側の高齢者の数が当面増え続け、支える側の数は少子化で急激に減り続けるのだから、このままでは社会保障制度が維持できないのは誰が見てもわかる。今回の医療費負担増の政策は、ある意味自然な流れかもしれない。

 しかし、一歩立ち止まって考えてみると、そもそも、社会保障の対象を年齢で区切るのが適切なのだろうか。

 シングルマザーで難病の幼児を抱え、働こうにも働きに出られない人、18歳になって児童養護施設を出なければならない若者など、手厚い支援を必要としている人は多いが、こういう人たちには高齢者に比べて光が当たらない。社会福祉とは、このような人々を支えるためにあるもので、若者か高齢者かは関係ないはずだ。

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