年末年始、帰省したいのに帰れない、控えたいのに帰らなければいけない──。人の数だけさまざまな事情があり、帰省を自粛できないケースも当然ある。求められるのは、帰省の善悪ではなく、「広めない」という意識と行動だ。AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号、コロナ禍での帰省で気を付けるべき点を紹介した。
【久住英二医師監修!帰省時に知っておきたい五つのポイントはこちら】
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内科医でナビタスクリニック理事長の久住英二医師は、いつでも行けるような友人との旅行などは、今は思いとどまってほしいとしつつ、こう話す。
「病気の親戚がいて来年には会えないかもしれない、あと何年元気でいられるかわからない高齢の祖父母に孫の顔を見せたいなど、事情は人それぞれです。それを禁止することはできないし、帰省した人やそれを受け入れた家族が責められるべきでもありません」
では、帰省する場合どのようなことに気を付ければいいのだろうか。久住医師のアドバイスはいたってシンプルだ。
「行く前と帰ってきた後にPCR検査を受けること」「移動中は不織布の使い捨てマスクをして手洗い・消毒を徹底すること」「帰省先では家族など会わなければいけない人との接触だけにとどめ、外食や同窓会などは行わないこと」だという。
「新幹線の車内でもマスクを外して大声で騒いだりせず、皆が静かに過ごしていればクラスターが起きる危険は小さい。基本的な感染対策を続けることが一番です。そして、自身が陰性であることの証明として、帰省直前にできる限りPCR検査を受診してください」(久住医師)
年末年始は発熱などの症状が現れても、休診する医療機関が多く、受診やPCR検査が難しくなることが予想される。帰りの新幹線には「発熱者がいる」と考えて、特に消毒などを徹底したほうがいいという。
また、SNS上では、「人が密集する可能性のある新幹線を避けて車で帰る」などの投稿も見られる。しかし、久住医師はこの考えには否定的だ。
「確かに、コロナだけを考えると車の方が安全です。しかし、長距離運転に慣れていない人がこの時期に運転するのはコロナ以上のリスクです。医療体制が手薄になる年末年始の事故は、医療機関に大きな負担をかける。慎重に判断してほしいです」
■むなしい首相の言葉
近づく年末年始。菅首相は14日の会見でこう述べた。
「ぜひ、国民の皆様におかれましては、年末年始、静かにお過ごしいただいて、このコロナ感染というものを何としても食い止める。そうしたことにご協力いただきたい」
しかし、行動も責任も伴わないそんな言葉はただただむなしく響く。
そして、繰り返しになるが帰省する事情は人それぞれで、帰省者が責められるべきではない。帰省する人、帰省先で接する人がいかに安全に過ごせるか。万一ウイルスが持ち込まれた場合に、いかにそれを広めないか。基本的な感染対策こそが、いま改めて求められている。(編集部・川口穣)
※AERA 2020年12月28日号-2021年1月4日合併号より抜粋