半年前の夫の死をきっかけに、これらNPOなどの利用を検討中だという60代後半の女性は、先日、ショックな出来事があった。自分は仲がよいと思っていた亡夫の親類と久しぶりに連絡を取り、世間話が老後の話題におよんだ時だ。何の気なしに「○○ちゃん、身内の方はどなたかいらっしゃらないの」と尋ねられたのだという。

「身内だと思っていた人からそう言われ悲しい気持ちになりました。主人が存命のころは、毎月1回は一緒に食事をし、打ち明け話もしたりして何かあったら相談できる関係だと思っていたのですが……。気を使いながら面倒をみてもらうのは嫌だなって思いました」

 NPOだけでなく、企業も、こうしたサービスに乗り出している。葬儀や仏壇、お墓など終活関連のポータルサイトを運営する鎌倉新書は19年6月、おひとりさま向けに葬儀や納骨、死後の手続きをサポートする「いい生前契約」を始めた。

 初期費用は24万8千円(税別)からで、生前に結んだ契約や公正証書遺言に基づいて遺体の搬送や葬儀、納骨、役所への届け出など死後の手続きを代行する。追加料金がかかるが、オプションで遺言の執行や公共料金の解約・精算、病院介護施設の退去手続きなども引き受ける。

「サービスのうち、遺言書の作成や任意後見、身元保証などへの関心が高い」(担当者)

 葬儀や葬祭ホールの運営を手がけるつばさ公益社(長野県佐久市)も同8月から、亡くなった後に遺体を引き取り、葬儀や納骨、遺品整理や役所への手続きなどを代行する。篠原憲文社長は語る。

「葬祭サービスの顧客からの要望が強く、必要に迫られて事業を始めました。財産については比較的しっかりと対応する人が多いようですが、葬儀や納骨などは、どうすればよいかわからないという人も少なくない」

 金融機関も、この分野に力を入れ始めた。三井住友信託銀行は19年12月に「おひとりさま信託」をスタート。利用者は、同行に300万円以上を預け入れるほか、葬儀や埋葬の方法や万が一の際の連絡先、公共サービスの解約、デジタル遺品やペットの扱いなど、亡くなった後の希望を「エンディングノート」に残しておく。ノートに書いた死後事務は銀行とは別に立ち上げた一般社団法人「安心サポート」が担う。

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