コロナ禍の8月、長野の別荘地で、密を気にせずに撮影できたWOWOWオリジナルドラマ「ペンションメッツァ」が1月から放送される。“自然体”の代名詞となった小林聡美さんも、ドラマで演じた役のような凜とした日々とは程遠い日常を送っているという。小林さん流・人や仕事や時代とのほどよい距離感とは? リモート取材で本人に聞いた。
【前編/自然体女優・小林聡美が語る心地よい距離感「ズケズケ入っていくことはできない」】より続く
仕事以外のことに関しては、あまり頑張らないことを身上にしている。
「仕事はやらなきゃいけないことだし、頑張りますが、だからと言って失敗したって死ぬわけじゃない。『やめちまえ!』って言われても、『すいません』って謝って、また頑張ればいい。この仕事を始めた14歳のときから仕事は頑張っているつもりですけど、俳優に執着していたわけではなくて、精いっぱいやってダメだったらそれまで、と思っていましたね」
ドラマ撮影が終わると、すぐに、舞台「あなたの目」の準備に取り掛かった。ドラマがゲストとの2人芝居なら、舞台は八嶋智人さんと野間口徹さんとの3人芝居。「ピサロ」や「アマデウス」の作者として有名な英国の劇作家ピーター・シェーファーの丁々発止の会話劇だ。
「本当に、この8~9月は頑張りました(笑)。充実感? 仕事の最中はいつも必死です。作品に取り組んでいる最中は、ひとまず演出家や監督のOKが合格ラインですが、『今の芝居、うまくできたかも』みたいな感覚を味わうことはありません。毎回悩みながら、『これでいいのか?』と自問自答しながら続けている感じです。芝居に完璧はないし、正解もないのですが、舞台の稽古なんかは、ほとんど修行ですね(苦笑)」
舞台の話になったとき、画面の向こうで小林さんは、わかりやすく顔を歪ませた。画面越しということで多少のアピールはあるにせよ、その準備が大変だったことは間違いない。それなのに、なぜまた舞台をやりたいと思うのか?