日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「お正月に多発するお餅の窒息事故」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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新型コロナウイルス感染症の終息の兆しが見えないまま、2020年が終わろうとしています。
政府はこれまで、Go Toトラベルにまつわる事業が感染拡大の要因になっている証拠はないとし、事業を継続する方針としていました。しかしながら、新型コロナウイルス感染者数の急増を受け、一転してGo Toトラベルの運用を見直すことを表明し、12月28日にはGo Toトラベルが全国で一斉に停止しました。
帰省を含めた移動は自粛するよう呼びかけられてはいるものの、年末年始の帰省による人の移動によって、さらに感染が拡大することも懸念されています。とはいえ、年末年始は帰省をせずに、新年を迎えるという方も多いのではないでしょうか。
さて、今回はお正月に注意したい窒息事故についてお話したいと思います。
お正月に欠かせない「お餅」。お正月にいただくつきたての餅は、格段に美味しいですよね。そんなお餅ですが、よく噛まないうちに飲み込んで、喉に詰まりそうになったことはありませんか? 私も、餅をしっかりかんでいないまま飲み込んだときに、喉をつまらせそうになったことが何度かあります。
実は、消費者庁が人口動態調査から行った分析から、高齢者における「餅」による窒息死亡が1月に集中して発生しており、元旦を中心とした三が日に死亡している件数が特に多いことがわかっています。
餅だけに限りません。年間の「気道閉塞を生じた食物の誤えん」による死亡者数は、65歳以上が全体の9割ほどを占めているのです。人口動態調査における、不慮の事故の「その他の不慮の窒息」のうち「気道閉塞を生じた食物の誤えん」による死亡者数によると、もっとも多いのは80歳以上です。ついで65歳から79歳、45歳から64歳と続きます。