検察庁(C)朝日新聞社
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「桜を見る会」疑惑で安倍前首相を不起訴にして批判された検察庁。その検察で違法捜査や証拠改ざん疑惑が浮上している。元検察事務官が訴える「第二の村木厚子(元厚生労働事務次官)事件」とは? 検察の不正義を暴く。

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「長く仕えた検察がここまでひどいとは、思いもしませんでした」

 怒りに口元を震わすのは、元神戸地検の検察事務官、Aさん。

「検察が法を無視して一般の検察事務官である私に違法なことをさせていたのです。それが処分の引き金になった。その後、検察は証拠改ざんまでして裁判に出してきました」

 神戸地検の刑事部に配属されたAさんは、当時の刑事部長から呼ばれて、

「これから一任事件をやってもらいます」

 と声をかけられたという。一任事件とは何か?

 検察事務官も検事、副検事と同様に、被疑者や参考人などの取り調べ、供述調書の作成などが可能だ。その場合、検察庁法などで定められた検察官事務取扱検察事務官(以下、検取)という資格を得て、検事や副検事の指導・監督のもとに捜査に加わることとなる。

 だが、Aさんの場合は異なっていた。

「いきなり、副検事から警察で捜査した記録などを渡されて『これをやってください』と命じられました。本来、検事、副検事がやらねばならないものを、検取でもない検察事務官が、最後まで一任されたというものでした」

 つまり、警察から検察庁に送致された事件の捜査、取り調べ、起訴か不起訴かの判断まで、すべて検察事務官が担当して判断しろと指示されたという。

 Aさんが見せてくれた検察事務官当時のロッカーは大量の刑事記録の書類であふれていた。

 10年1月の兵庫県警からの<送致書>には、手書きで<部長決裁まで任>と記されていた。同年2月にAさんが作成したのは、事件を捜査・検討して不起訴とした<不起訴裁定書>。そこには<主任検察官>としてAさんの印鑑が押印されている。

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