昨年11月、理津子さんは、別居親と子どもの自由な面会を求める「自由面会交流権訴訟」の原告の1人として裁判を起こした。離婚や別居によって親に会えなくなったのは、国が親子の面会交流権を定める立法を怠ったからだとして国に賠償を求めたのだ。この訴訟は、17人の原告団に「子ども」の立場の人が含まれていることでも注目されている。

 竹島るい子さん(仮名・50歳)は7年前、当時9歳の息子を元夫に連れ去られた。以来、一度も息子に会えていない。元夫が、息子と母親との面会交流を拒んでいるためだ。

 元夫が息子を連れて家を出たのは、るい子さんが1人で自分の実家に帰っていた週末のことだった。その直後、不仲だった元夫から手渡された離婚届に、るい子さんは勢いで判を押してしまった。それまで離婚届など見たこともなかったから、未成年子の親権者を記入する欄があることなど知らなかった。気づいたら、元夫を息子の親権者とする協議離婚が成立していた。

 念のためだが、るい子さんに不貞行為その他の有責事由は、一切ない。離婚理由は、子育てをめぐる意見の対立から始まる夫婦の不仲だ。子育てと仕事との両立で体を壊したるい子さんは、自分の母親に応援を頼んだ。母親は、泊まり込みで来てくれたが、元夫はそれが気に入らなかった――その延長線上での連れ去り劇だった。

 しかし、なぜ元夫は息子をるい子さんに会わせようとしないのか。

「私が思うに、元夫は私に嫌がらせをしたいのです。元夫は思い込みが激しく、極端な考え方をするところがあり、実は精神科にも通っていました。夫婦仲が悪くなり、私のことが大嫌いになったので、今は私から大事な息子を引き離すことに必死になっているのでしょう」
 
 るい子さんは離婚後すぐ、家庭裁判所に親権者変更と面会交流の調停を申し立てたが、のらりくらりとかわされ、あっという間に4年が経過した。決着がつかず、審判に移行したが、元夫によるそれまでの監護実績から、親権者変更は認められなかった。

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「不審者」として警察に通報された