オーストラリアなど南半球の温帯地域では、インフルエンザは4~9月にかけて流行がピークを迎えることなども考慮すると、今までは、日本ではインフルエンザの流行期でなかったとしても、流行期にあった渡航先で感染、または流行している地域からやってきた人に渡航先で感染し、ウイルスと共に日本に帰ってくる、など様々な感染経路から日本に持ち込まれていた可能性があります。しかし、日本を含め、世界中の各国で入国が禁止または制限されたことにより、人々の往来は激減。様々な感染経路が遮断された結果、2020年から2021年にかけての今シーズンは、そもそもインフルエンザウイルスの国内への流入が減少している可能性がありそうです。
それに加え、マスクの着用、手洗い、アルコール消毒、密を避ける、ソーシャルディスタンといった感染予防対策、さらにはインフルエンザの予防接種が例年以上に行われた中では、たとえウイルスが国内へ流入してきたとしても、流行まで引き起こすことはできないのでしょうか。
一方の新型コロナウイルス感染症ですが、日本では昨年12月から感染者は急増し、1月7日には東京・神奈川・千葉・埼玉で緊急事態宣言が発令されました。イギリスでも、1月8日には一日の新型コロナウイルス感染症の新規感染者が約6万8000人、死者は一日1300人となり、サディク・カーン ロンドン市長はこの日「ウイルスの拡散を制御できず、医療崩壊が起きている」として、事実上の「統制不能」を宣言しています。
未だ、世界的な流行の治まる兆しが見られない新型コロナウイルス感染症ですが、One World in Dateによると、1月11日時点での累計新型コロナウイルスワクチン接種量は、米国669万回、英国132万回、イタリア64万回、ドイツ53万回、フランス8万回と、昨年12月から世界では新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されています。
日本はどうかと言うと、国内の臨床試験や審査の手続きを経る必要があるため、接種開始は早くても3月ごろになる見通しだと言います。世界からかなりの遅れをとって接種がスタートすることは間違いありません。スタートするまでに歯止めが効かないほど感染が拡大しないことを願うばかりです。
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員