AERA 2021年1月18日号より
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 新型コロナウイルスの重症化や死亡リスクは、男女で差が見られることが報告されている。ワクチン接種にも男女差を考慮した方針が必要かもしれない。AERA 2021年1月18日号から。

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文化的・社会的な背景により男女が異なった行動をとる「ジェンダー」の差も、新型コロナウイルス感染症の重症化の差に影響しているとみられている。

 イタリアのボッコーニ大学などの研究チームが昨年11月に米科学アカデミー紀要に発表した論文によると、女性の方が男性よりも新型コロナウイルスの脅威をより強く感じており、マスク着用や大勢で集まる機会の回避など、各国政府による感染予防対策にも従っている割合が高かった。

 同チームは、米国や英国、豪州、フランスなど経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進8カ国の約2万2千人を対象に昨年3月と4月にアンケートを実施。その結果、女性の方が男性よりも約10ポイント、新型コロナウイルスの脅威を強く感じていた。また、マスク着用や手洗い、飲酒を伴う会合を含めた不要不急の外出を控えるといった感染予防対策に従っている人の比率も数ポイント高かった。

 性差による免疫反応や重症化の違いなどは、今後のワクチン接種や治療方針にも影響する。季節性インフルエンザワクチンでは女性の方が副反応が強く出る一方、男性のほぼ半量で同じ効果が得られるという。新型コロナウイルスのワクチンでも同様の性差がみられるなら、女性は接種量を男性よりも減らした方がいい可能性がある。

日本性差医学・医療学会理事長を務める下川宏明・国際医療福祉大学教授は男性にこうアドバイスする。

「ハイリスクであることを自覚し、会食など感染リスクの高い行動を控え、マスクや手洗いなど感染予防を徹底してほしい。喫煙者はすぐに禁煙を」

(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年1月18日号より抜粋