保湿剤の塗る量をケチってはいけません。たっぷり塗るのが基本です。また保湿剤をすり込んで塗ってはいけません。すり込んで塗ると手荒れが悪化します。カサカサがひどい場合は、寝る前にたっぷり保湿剤を塗ってその上から手袋をすると効果が上がるでしょう。
手荒れがひどいときは家事を避けたいものです。なるべく家族やパートナーに家事をしてもらいましょう。一人暮らしの人やどうしても洗い物などの家事を自分でやらなくてはいけない場合は手袋を二重にしてください。洗剤の刺激もあるのでゴム手袋をしたほうが良いのですが、ゴム製の厚い手袋は中で蒸れて手荒れを悪化させます。ゴム手袋の下に綿の手袋をしておくのがポイントです。
また、エビデンスはまだ出ていませんが、グリセリンなどの保湿剤入りのアルコール消毒剤も販売されています。試してみる価値はあるかもしれません。
■こんな場合は皮膚科を受診しましょう
さて、自宅でできる手荒れの対処法をいくつか紹介しましたがやはり限界があります。手指衛生の回数が適切で保湿剤もしっかり使っているけど良くならない。この場合、手荒れがどういう状態になったら病院に行くべきでしょうか?
私が考えるポイントは三つです。
まず、「切れて痛い」場合は皮膚科を受診しましょう。切れた部分からばい菌が入る可能性があります。次に、皮膚から「汁が出る」場合も皮膚科医にみてもらうほうが良いでしょう。皮膚から汁が出るということは、すでに傷になっていることが考えられます。しっかり治療することが必要です。最後に「手が赤くはれた」場合は病院でみてもらいましょう。手湿疹が悪化しただけでなく、他の原因も考えなくてはいけません。例えば普段つかっている物にかぶれてしまった場合など、パッチテストという検査で原因を特定する必要があります。
皮膚科ではステロイド外用剤を出してもらうなど、ひどい場合は紫外線療法などを行ってくれる施設もあります。手荒れがこじれてひどい手湿疹になってしまう前に、我慢せずに皮膚科を受診することをおすすめします。
文献1: Acta Derm Venereol, 2010; 90: 602―606.
文献2: メディカル朝日 別冊,2000; 29: 8.