北朝鮮の平壌で開催中の朝鮮労働党の第8回党大会に出席する金正恩党委員長=2021年1月7日付の労働新聞から
北朝鮮の平壌で開催中の朝鮮労働党の第8回党大会に出席する金正恩党委員長=2021年1月7日付の労働新聞から
AERA 2021年1月25日号より
AERA 2021年1月25日号より

 金正恩氏が労働党大会で「総書記」に就任。なぜ、総書記なのか。実妹の金与正氏の地位が下がったのはなぜか。AERA 2021年1月25日号で、「白頭山血統」と北朝鮮の現状を読み解いた。

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 北朝鮮の第8回朝鮮労働党大会が5~12日まで平壌で開かれた。最高指導者の金正恩(キムジョンウン)党委員長は新しくつくられた総書記のポストに就任した。

 数ある党の役職のなかでも、総書記は党内の選挙で選ばれるわけではなく、全国民が一致してお願いするという「推戴(すいたい)」の形をとる。党大会が全会一致で採択した推戴の決定書は、正恩氏の業績を「わが祖国を世界的な軍事強国に変えた」「民族万代に末永くたたえるべき希世(きせい)の愛国功績」などと、これ以上ない美辞麗句で褒めちぎった。

 もともと、会場となった4.25文化会館には、正恩氏の軍服姿での執務の様子や、白馬にまたがった姿を描いた巨大な絵画が飾られ、参加者が熱心に参観していた。最初から党大会の最大の目的は、「正恩氏の権威をいかに高めるか」にあったと言っても過言ではないだろう。

 だが、党大会をつぶさに見ていくと、隠し通せない失敗がいくつも見つかる。一番わかりやすかったのが、2016~20年にかけて実施された国家経済発展5カ年戦略について、正恩氏自身が5日の報告で、「掲げた目標はほぼ全ての部門で途方もなく未達であった」と認めた失敗だった。前回党大会ではこの5カ年戦略を「人民経済発展のための段階的な戦略だ」と紹介した正恩氏だったが、今回の党大会で自らの責任に言及することはなかった。そんな正恩氏の演説を聴いていた参加者は、ひたすら自分の顔の位置まで手を上げて一生懸命拍手するばかりだった。

■地位後退した金与正氏

 他にも、ひっそりと過ちを認めた点が二つある。

 一つは実妹の金与正(キムヨジョン)氏の扱いだ。与正氏は前回党大会で党中央委員に選ばれ、17年10月に党政治局員候補に昇進した。米朝協議の決裂を受けて一時期、同職から退いた時期があったが、今回の大会にも政治局員候補として参加していた。だが、今回の党大会で選ばれた中央委員は138人。うち政治局員・局員候補は計30人だが、与正氏はこれに入らず、中央委員にとどまった。公式の地位は明らかに後退した。

 これについて、脱北した元党幹部は「男尊女卑の文化が残る朝鮮の風土と、妹だけを特別扱いすることへの反発に配慮せざるをえなかったのではないか」と語る。中央委員は党副部長クラスが就任するポストで、崔善姫(チェソンヒ)第1外務次官も中央委員だった(今大会で中央委員候補に降格)。妥当な処遇とも言える。

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