「『良性の可能性が高いから様子をみましょう』と言われて、心配になって当院にセカンドオピニオンを聞きに来た患者さんの中には、悪性だった方もいます。たとえ良性の可能性が高い場合でも、経過をしっかりとみていくことが大切です」(近藤医師)
生検のリスクなどを考慮して良悪性を確定しないまま、経過観察をする場合もある。腎がんの進行は小さい腫瘍だと比較的ゆるやかなものが多く、大きくなるスピードは年間で3~4ミリ程度といわれている。経過観察をする場合、半年に1回程度CT検査を受けて、腫瘍が大きくなるスピードなどをみる。
「注意しなければならないのは、経過観察をした場合に1年間で1%程度は転移が見つかる患者さんがいるということです。また、放射線被曝があるCT検査をいつまで定期的に受けるのかという問題もあります。若ければたとえ良性だったとしてもその後の経過観察が不要になるので、良悪性がはっきりしない状態のままでいるよりも手術で腫瘍を摘出したほうがいいという考えもあります」(同)
国内の一部の病院のデータでは、腎がんと診断されて腎臓の一部を摘出する「部分切除」の手術をした人のうち、約7%は良性の人が含まれていたという報告もある。
腎臓にできる良性の腫瘍として多いのが、「腎血管筋脂肪腫」だ。がんに比べるとスピードはゆるやかだが、次第に大きくなる。
4、5センチになると腫瘍から出血したり、腎臓の機能に影響を及ぼしたりする危険性があり、手術を検討する。たとえ良性であっても経過をみていくことが不可欠だ。
■手術に踏み切るタイミングが重要
がんが4センチを超えると、手術、特に部分切除をした場合に合併症を起こす確率が高くなる。また腫瘍が小さいうちに部分切除ができれば、腎機能をより残せる。手術に踏み切るタイミングを見極めることも大切だ。
腎がんの部分切除は、2016年から保険が適用されているロボット手術が普及している。腹部を30センチ程度切開する開腹手術に比べてからだへの負担が少なく、回復が早い。
腫瘍が4センチ以下で高齢であったり、持病があったりして手術を受けられない場合には、局所麻酔でできる「凍結療法」という選択肢もある。
腎がんは、小さいうちに治療できれば、治る可能性が極めて高い。ただし、手術後10年以上経ってから再発するケースもある。
「私が手術した患者さんの中には術後25年経ってから再発した方がいます。腎がんはたとえ手術で切除できても、それで終わりではありません。治療後も1年に1回は検査を受けるようにしてください」(同)
腎がん手術については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/
(文・中寺暁子)
※週刊朝日2021年1月29日号より