自覚症状がほとんどなく、健康診断などで偶然に見つかることが多い腎がん。腫瘍が小さいと良性と悪性の区別がつきにくく、診断が難しいことも。進行は比較的ゆるやかで、経過観察という選択肢もある。
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50歳ごろから増え始める腎がん。女性に比べて男性のほうがかかりやすい。腎臓は、腹部に左右一つずつあり、主な働きは尿をつくることだ。「腎皮質」で血液をろ過して尿をつくり、その尿を「腎盂」に集めてから尿管を経由して膀胱に送り出す。腎臓にできるがんのうち、約9割が腎皮質の細胞ががん化する「腎がん」だ。腎盂にできる「腎盂がん」とは、性質や治療が異なり、一般的に「腎がん」とは、腎皮質にできるがんを指す。
腎がんの原因ははっきりとわかっていないが、多くのがんと同様に喫煙や肥満がリスクになると考えられている。
腎がんは、4センチ以下で見つかった場合、10年生存率は95%を超える。がん研有明病院泌尿器科部長の米瀬淳二医師はこう話す。
「かつては血尿、疼痛、腹部のしこりが腎がんの3主徴と言われていましたが、症状がある場合、多くは進行しています。最近は健康診断の普及や画像検査の進歩により、4センチ以下の小さいがんが発見されるケースが増えています」
腎がんが見つかるきっかけとなる検査が、腹部の超音波(エコー)検査だ。健康診断や人間ドック、ほかの病気の検査で偶然に見つかるケースが多い。
腎がんになった人のうち約8割が、無症状で発見されている。症状がなくてがんが見つかった場合と症状があって見つかった場合では、生存率に大きな差があることがわかっている。
「腎がんは、からだに負担のない超音波検査で比較的簡単に見つけることができます。50歳を過ぎたら年に1回は腹部の超音波検査を受けてほしいです」(米瀬医師)
■生検にもリスク、経過観察の選択も
超音波検査でがんが疑われた場合、CT(コンピューター断層撮影)検査によって詳しく調べる。ほとんどの場合は画像で診断がつくが、腫瘍の大きさが2~3センチ以下と小さく、ごくわずかに悪性と良性の区別がつかないことがある。
この場合、細い針を腎臓に刺して組織の一部を採取し、その組織を顕微鏡で調べる生検を実施する。東京女子医科大学東医療センター泌尿器科教授の近藤恒徳医師はこう話す。
「生検は針を刺すことで出血して治療が必要になるリスクが約1%、がん細胞をまき散らすリスクが0・01%あるといわれています。一般的には画像検査などで診断がつかない場合にかぎり、実施されます」
通常は生検をすれば診断が確定するが、腫瘍が小さすぎると、まれに針を刺す場所がずれてしまうことがある。