事業会社ニトリの武田政則社長は昨年末の会見で「工場に対して、(石綿の)検査依頼が明確に行われていなかった」と認めた。カインズも同様だ。不二貿易は「工場から検査結果を取得し、含有なしという結果を確認済み」と回答したが、分析頻度や基準など詳細は不明だ。しかも3社は、原材料や製品の石綿について独自の検査を一度もしていなかった。

 厚労省は「ろくに調べもせずによくわかりませんでしたとなったら、改めて調査を求めることになる」と釘を刺す。コロナ禍の現地調査も容易ではないだろうが、徹底した原因究明を求めたい。

 今回の珪藻土製品に関連し、同省が最もおそれているのは輸入建材で石綿が検出されるのではないかということだ。

 実際、豪州では中国からの輸入建材に石綿が含まれる事例が相次ぎ、問題となった。その結果、輸入手続きで分析結果の提出を義務づけ、抜き打ち検査も積極的に行う。日本では、石綿禁止後の建築物の石綿調査が免除され、豪州のような輸入手続きもない。

 同省は「輸入品の石綿含有のチェックが十分にできていないのではないかと改めて認識した」(化学物質対策課)として、独自に輸入品を分析調査する方針。関連省庁と水際対策の検討も始めるという。

 海外では、子ども向けの製品からも石綿が検出されている。英国では、鑑識セットの玩具で指紋を採取する粉に、豪州ではクレヨンにそれぞれ含まれていた。いずれも中国で製造されたもので、タルク(滑石)に石綿が混ざっていた。

 米国では現在、ベビーパウダーに石綿が混入し、健康被害を受けたとして約2万件の損害賠償請求訴訟が起きている。日本でも同様にベビーパウダーを業務で使って中皮腫を発症し、労災認定を受けたケースがある。

 今回のような問題が起き続けると、一般住民の健康被害にもつながりかねない。

(ジャーナリスト・井部正之)

*週刊朝日オンライン限定記事