実は仏さまは「扁平足」であることをご存じだろうか。そこには仏教的な深い意味とともに、医学ともつながりがあった。世界遺産・薬師寺の執事長の大谷徹奘さんと足病医の久道勝也さんがオンラインで対談した。
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久道:お坊さんという仕事は、普段は法衣に雪駄だと思いますが、仕事を離れれば現代人として洋服を着たり、スニーカーを履く時もあると思います。大谷さんは、日頃どのように靴を履きこなされているんですか。
大谷:私は、普段も雪駄しか履きません。洋服を持っていないんです。もちろん作業する時のジャージー程度はありますが、ネクタイも背広も革靴も所有していません。
ただ、雪駄だと足がすごく冷えるので、冬場は靴を履くようにしています。特に寒い日にはボアの付いた長靴を履きますが、日常は足袋に雪駄というのが基本ですね。
久道:大谷さんは17歳の時にお寺に入られ、以降、和の履物を履いてという生活を送っておられる。歩き方に反映されている部分はありますか。
大谷:普段は、膝下だけで歩きます。法衣では大股で歩くということがしにくいのです。
久道:それはすごく面白い。足の変形はいかがでしょうか。
大谷:私はものすごい扁平足なんです。プールから上がると、足跡は、逆三角形の上に点が五つついていると言ってもよいと思います。
久道:僕みたいな仕事をしている人間からすると、ぜひレントゲンを撮らせてもらいたい。
大谷:はい。できれば私も、直接会って足を見てもらいたかったです。
実は仏さまも扁平足なんです。
久道:そうでしたか。それには何か理由があるんですか。
大谷:「自分が立っている大地に対して平等でなければいけない」という考え方のようです。さらに足裏に種々の文様があるのですが、人間の構成要素を表しているのだと思います。先生がご専門とされる足病医学では、足を「臓器」の一つと捉えられているそうですね。
仏教の発祥となったインドでは、足裏の各所がいずれかの臓器とつながっている。先生の言われる足裏が臓器であるという考え方と似ています。仏教と足病医学とのご縁を感じます。
久道:聞けば聞くほど興味深い話です。また続きの話をじっくりさせていただけたらと思います。
(構成/本誌・松岡瑛理、編集協力/朝日新聞大阪本社 寺社文化財みらいセンター事務局長・平野圭祐)
※週刊朝日 2021年1月29日号より抜粋