関東地方の内科医(42)が勤務する病院では昨年30人余りの院内感染が発生。担当患者も数人感染し、一人が亡くなった。

「4~5年診てきた患者さんを亡くし、ご遺族から『先生には本当にお世話になったけど、院内感染ってどういうことですか』と責められました。感染したナースの中には辞めた人もいるし、軽症者の受け入れを危険視してなのか、高齢の医師も退職しました。感染対策などで業務の負担が増えましたが、医療従事者は減っていく。希望の見えない状況です」

 コロナ禍で身を削って働く──。それが医療従事者に対するイメージだろう。だが、そうした医師たちが確実にいる一方で、AERAが実施したアンケートからは、少し違った実態も垣間見える。19年と比べ勤務時間や担当業務の負担が増えた医師は4人に1人。約半数は「変わらない」と回答し、減ったという人も16.9%いたのだ。

■患者減で経営が悪化

 背景には、深刻な患者減がある。感染を恐れての受診控えに加え、手洗いやマスク着用などによる感染症対策の徹底によって、風邪やインフルエンザの患者も激減した。特に患者の減少が著しいのが小児科と耳鼻咽喉科だ。日本医師会は昨年11月、同8月の外来患者数が前年(19年)の同じ時期に比べて、小児科は30.6%、耳鼻咽喉科は16.9%減少していたと発表した。

 そして、患者の減少は病院経営に暗い影を落としている。

 東京都文京区の細部小児科クリニックでは、昨年4月の診療報酬は前年同月と比べて約6割減、5月は予防接種以外の患者がゼロという日もあり、同約7割減だった。秋以降徐々に患者が戻ったが、12月から再び受診控えが広がり、正月明け5日の患者はそれぞれ2人。

 持続化給付金を申請し、政府の要請を受けて発熱外来を開くなどして収入を増やしても、クリニックの経営は赤字だ。その分は園医などの給与で補填する。細部千晴院長は嘆く。

「変異種を怖がり、子どもを幼稚園に行かせていいのかと相談する方もいて、受診がどんどん抑制される。小児科経営に明るい未来はありません」

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