■頭の中を「消しゴム」で
休職してからも買い物は止まらず、気づくとカード会社から多額の請求が届いていた。キャッシングにも手を出し、27歳のときにはカードを止められた。
「でも、何も思いませんでした」
なぜなら、複数のカードを使いまわしていたから。1社止められても、別のカードはまだ使える。買い物を続けるうちに、滞納額は200万円に膨らんだ。
当時一緒に暮らしていた親が慌てる様子を見て、初めてまずいことをしたと気づいた。
「親にも怒られ、ちゃんと借金を返せと何度も言われました。ただ、精神状態もあまりよくなく、どうすればいいかわからなくなったんです」
精神的な不調もあり、現在生活保護を受けて暮らしている。毎月5日に保護費が支給されるが、2週間ほどで使い切ってしまう。次の支給日が来ると、しばらく買えなかった反動からすぐ買い物に走る。
「朝食を食べて少しすると、頭の中に『あれが欲しい』という衝動がポーンと浮かぶ。夕方には収まるので、落ち着くまで頭の中を消しゴムで消すようなイメージで戦います。でも、どうしても買ってしまうことが多い」
なぜ、人は依存してしまうのか。松本さんは、背景に孤独や苦痛があると指摘する。
「快感だけでハマっていると思われがちですが、僕はそう思いません。ネガティブな感情を緩和するのに、その依存対象が役立っているからやめられない。違法か合法かを問わず、寂しさやつらさ、自分は誰からも愛されていないんじゃないかといった不安を持っている患者さんはすごく多いんです」
■かくれ依存症 セルフチェックリスト
一つでもあてはまったら要注意。生活習慣を今すぐ見直して。松本俊彦先生への取材をもとに編集部が作成
(編集部・福井しほ)
※AERA 2023年2月6日号より抜粋