AERA 2023年2月6日号より
AERA 2023年2月6日号より

「モチベーションやパフォーマンスを上げるための手段だったものが、いつの間にか、それを使うこと自体が目的化し、行動のルールが変わってしまう。大切な人を悲しませたり、健康や社会的地位、経済状態を犠牲にしている状態は注意が必要です」

 たとえば、カフェイン。大脳を興奮させる作用があり、摂取すると一時的に仕事や勉強の効率が上がったように感じる。だが、松本さんによれば、「元気の前借り」をしているようなもの。カフェインが抜けると離脱症状が起き、それを補うためにまた摂取したくなる。

「アメリカの精神医学会の基準では、カフェインに依存性はあるものの自分の意思でやめることができるとされています。ただ、若年層の場合はエナジードリンクを飲む本数がどんどん増え、手っ取り早くカフェインをとるために薬局で錠剤を入手するようになるというケースも増えています」(松本さん)

■買い物好きだったのに

 子どもの部屋に錠剤の空き瓶が転がっていたり、薬を買うために親の財布からお金を盗んだりして、発覚することも多いという。「大切なもの」のランキングが変わった例の一つだ。

 ほかにも、アルコールやゲームといった日常的なツールが依存症につながるケースは珍しくない。そこで、アエラでは、松本さんへの取材をもとにランキングの変動を見直すチェックリストを作成した(最下部参照)。

 二日酔いで仕事の約束をすっぽかしたり、ギャンブルのためにお金を借りるようになったりと、以前と変化がある場合は「かくれ依存症」の注意が必要だ。当てはまるからといってただちに依存症だというわけではないが、生活習慣の見直しの参考にしてほしい。

 広島県に住む女性(41)もランキングの順位がいつの間にか変動し、買い物好きから「買い物依存症」になっていた一人だ。

 自宅の戸棚を開けば、日用品の詰め替えパックが所狭しと並ぶ。数を数えると、詰め替え用の洗剤とハンドクリームがそれぞれ七つに、ボディーソープが四つ、入浴剤が6種類も。

「そんなに減るものでもないし、一つあれば十分なんです。でも、つい買ってしまう」

 もともと洋服を買うことが好きで、20代前半までは給料の範囲で買い物を楽しんでいた。貯金も100万円ほどあった。

 女性に「買い物依存症」の兆候が見え始めたのは、24歳の頃だ。当時勤めていた職場でパワハラを受け、ストレスからうつ病を発症。心労の重なりに比例して洋服を買い集め、貯金は底をついた。分割払いでごまかしながら買い物を続けた。

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