「娘は家で遊んでいると、突然ものを投げ出し叫んだりしてきました。娘は希望や拒絶をうまく言葉にできないのでよくわからなかったのですが、いつも通り学校に行けなくなり、『どうしてなの?』とフラストレーションがたまっていたのではないでしょうか」

 一方で女性も、娘と一緒にいた4月上旬から6月までの約2カ月は、「一日一日をどう過ごすのが良いのか毎日悩んでいた」と振り返る。

■メッセージを出す

 きつかったのはやはり睡眠不足だ。自宅で過ごすとどうしても運動不足になるため、娘は夜なかなか寝てくれない。寝かしつけるのに3時間近くかかり、自分は眠くても寝られなかった。さらに娘はストレスからか、女性の手をかんだり、ひっかいたりする頻度が多くなってきた。そんな時は思わず、娘の手を叩いたりした。女性は言う。

「感染の不安もあり、つらかったです」

 6月からは学校も再開し、娘は元気に通学している。だが、いつまたコロナの感染拡大によって学校が休校になったりするかと思うと、不安が募る。

「勉強が遅れるのも心配ですし、ルーティンが乱れると、娘にどういう反応が出るか心配です」

 コロナの収束の見通しが立たない中、発達障害のある子どもに親はどう対応すればいいか。先の郡司さんは、「普段から子どもとかかわり、小さなサインを見逃さないでほしい」と話す。

「こだわりが強くなったり、過眠や不眠になったり、独り言が増えたり、泣いたり叫んだり、子どものイライラのサインは表れ方が一人一人違います。一番良いのは、子どもがイライラしないように前もって対策することです。例えば、スケジュールを目に見える形で提示したり、切り替えさせる時は事前に具体的に予告したりすることで子どもの不安は軽減します」

 重要なのは、親は「怒りや不機嫌で子どもをコントロールしないこと」だという。

「イラッときて『どうしてできないの』と叱ったり、『これをやらなかったらお菓子をあげない』などと罰を与えたりすると、逆に子どもの問題行動が増えます。そうではなく、褒めること。例えば、箸を上手に使えただけでも『すごいね!』と褒めてあげ、いつもあなたのことを大切に見ているというメッセージを出すことが大切です」

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