発達障害は、脳の発達に関する先天性の障害と考えられている。症状はさまざまだが、たとえばASDの場合、ルーティンで行動する傾向があるため、変化に適応しにくいことがある。コロナ禍で「いつも通り」の毎日が過ごせなくなると、不安やストレスをためやすくなる。

 国の「発達障害情報・支援センター」が昨年7月から8月にかけて当事者とその家族に対し行った「新型コロナウイルス感染症の影響についてのアンケート」によれば、当事者352人から寄せられた「最近の状態」では、「睡眠の問題が増えた」が43%と最も多く、次いで「怒りっぽくなった/気分の浮き沈みが大きくなった」(42%)、「お金に関する心配ごとが増えた」(41%)と続く。背景には、これまでの生活が大きく変化し、心身の不調を感じている人が多いことがあると指摘する。

 当事者が子どもの場合は特に、保護者への影響も大きい。発達支援教室「るりえふ」(東京都渋谷区)代表で、20年近くにわたり発達障害の子どもを支援する郡司真子(まさこ)さんは、コロナ禍の今、当事者も親も心身共に追い込まれていると指摘する。

「とくにASDやADHD(注意欠陥・多動性障害)の傾向がある子どもはこだわりが強いため、それまでできていたことが急にできなくなると不安を感じ、気持ちが不安定になります。その結果、かんしゃくを起こしたり、自分の顔を殴ったり手をかんだりする自傷行為をしたり、排泄物を正しく扱えなくなったりもします。一方で、いつもより子どもと過ごす時間が増えた親も、過度に負担がかかって余裕がなくなり、叱ってはいけないとわかっていながら叱責したり虐待傾向になったりするなど、悪循環に陥ります」

 都内の会社員の女性(38)もそんな一人だ。ASDなどがある小学校2年の娘(8)は、コロナ禍で春先から学校が休校になったことでストレスをためていき、女性もイライラを募らせていった。

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