平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
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昨年12月の日本選手権女子400メートル個人メドレーで優勝した清水咲子 (c)朝日新聞社
昨年12月の日本選手権女子400メートル個人メドレーで優勝した清水咲子 (c)朝日新聞社

 指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第54回は、五輪まで約半年という時期の練習について。

【写真】昨年12月の日本選手権女子400メートル個人メドレーで優勝した清水咲子

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 今年の初戦となる北島康介杯が1月22日、東京辰巳国際水泳場で始まりました。オフシーズンの練習が試合でどう生かされるかを見る貴重な実戦の場です。首都圏に緊急事態宣言が出る中、新型コロナウイルス感染拡大防止の対策を徹底して、大会の実現に向けて力を尽くしていただいた関係者のみなさんに、感謝を申し上げます。

 東京五輪に向けて8人の選手を教えています。この時期に大切なのは、意欲も含めて、みんなの調子をそろえることです。同じ方向を向いて、ともに苦しい練習を乗り越え、楽しい時間を共有することで、より高いところに到達できる。それがチームで練習をやるいいところだと思います。

 昨年10、11月にハンガリー・ブダペストであった国際リーグ(ISL)で多くのレースに出た選手たちは、スピードが出せる状態になりましたが、その間の泳ぎ込みが十分にできなかったことから、12月の日本選手権では後半の粘りが足りない課題が見えていました。

 年末年始の練習では、スピードを維持するためにスプリント練習をたくさん入れつつ、8人の共通テーマとして持久力アップと陸上トレーニングによる体づくりに力点を置きました。

 2大会連続で五輪を目指す2人の女子選手の頑張りが目を引きます。ISL後に合流した個人メドレーの清水咲子は練習への取り組みがとにかく積極的です。萩野公介と同じ、みゆきがはらスイミングスクール(宇都宮市)出身で栃木・作新学院高校の2年先輩。4月に29歳になるチャレンジャーがチームに刺激を与えています。東洋大1年、19歳の酒井夏海は陸上トレーニングで筋肉痛になりながら、「今までできなかったことができるようになるのは楽しい」と言います。昨年の日本選手権は背泳ぎと自由形で3冠。前向きな気持ちが記録の伸びにつながるはずです。

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