北島康介が初出場した2000年シドニー五輪以来、様々なアプローチで五輪に挑んできましたが、前回書いたように、他人に左右されない思いが強い選手が結果を出してきました。

 12年のロンドン五輪女子400メートルメドレーリレーで銅メダルを獲得したリレーメンバーでは、背泳ぎの寺川綾、バタフライの加藤ゆか、自由形の上田春佳の3人を教えていました。

 寺川と加藤は08年北京五輪後、社会人になってから指導を始めましたが、東京スイミングセンター出身の上田は、北島が男子平泳ぎで2大会連続2冠を取った北京五輪までの強化練習にも参加していました。

 正月をはさんだ年末年始の練習で寺川、加藤の持ち味を生かすためにスピード強化のアプローチを試みました。そんな時期に上田と国立スポーツ科学センター(JISS)のプールサイドで話をしたとき、「綾さんたちがきたら練習量が減って、北京五輪を目指していたときの7割ぐらい。これでは私、強くならない」と涙ながらに訴えてきたことがあります。

 決して泣き言を言わない上田は、強い意志で日本の弱点と言われた自由形のレベルを引き上げて、五輪銅メダリストになります。

 五輪まで約半年。北島康介杯と2月のジャパンオープン(東京アクアティクスセンター)の結果を見て、泳ぎを研ぎ澄ましていく練習計画を立てていきます。(構成/本誌・堀井正明)

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数

週刊朝日  2021年2月5日号

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