医学部の6年次、9~12月にかけて各大学医学部で卒業試験が行われ、11月から医師国家試験の受け付けが開始。2月6日、7日におこなわれる医師国家試験の合格発表は3月16日だ。医師国家試験に合格すれば、厚生労働大臣から医師免許が与えられ、晴れて4月から研修医として医療現場で働くことができる
医学部の6年次、9~12月にかけて各大学医学部で卒業試験が行われ、11月から医師国家試験の受け付けが開始。2月6日、7日におこなわれる医師国家試験の合格発表は3月16日だ。医師国家試験に合格すれば、厚生労働大臣から医師免許が与えられ、晴れて4月から研修医として医療現場で働くことができる

 2月6日(土)、7日(日)の2日間にわたり、医師国家試験が実施される。医学部で6年間学び、医師国家試験に合格すれば、厚生労働大臣から医師免許が与えられ医師になる。しかし、厚生労働省医政局は、新型コロナウイルスに感染している場合は受験を認めず、追加試験も実施しないことを発表した。

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 多くの報道で目にする機会の多い、大学入学共通テストは 1月31日に第2日程が終了した。二つの日程が設けられたのは、センター試験と前身の共通1次試験を含めて初めてのことだという。

 今まで、年に1回しか実施されない試験は、たくさんあっただろう。しかし今年は、未曽有の新型コロナウイルスが、猛威を振るっている。それを踏まえ、共通テストは今年2回、本試験を設けた。

 約53万人が出願した第1日程(1月16、17日)に対し、第2日程の受験者は約2500人。また、もともと第2日程を志願し病気などで受けられなかった受験生は、2月13、14日の特例追試験に回るという。

■6年の学びの集大成である医師国家試験

 4年制大学とは違い、医学部は6年もの間、医学部に在籍して学ぶ。いろんなカリキュラムを編成している大学が多いが、1年次では専門科目である基礎医学など、医学の基礎となる人体の構造や機能を学び、2~4年次になると、各診療科の医師から知識や診療技能を学ぶ「臨床医学」の授業も始まる。4年次には共用試験があり、パスすると臨床実習が始まる。

 そして6年次には、卒業試験と医師国家試験という大きな試験が待っている。9~12月にかけて各大学医学部で卒業試験が行われ、11月から医師国家試験の受け付けが開始、2月におこなわれる医師国家試験の合格発表は3月だ。医師国家試験に合格すれば、厚生労働大臣から医師免許が与えられ、晴れて4月から研修医として医療現場で働くことができる。

■濃厚接触者は、公共の交通機関を利用せずに会場入りを

 2月6日、7日に行われる医師国家試験会場では、以下のことが決められている。

〇会場入り口(原則施設外)でサーモグラフィーカメラによる検温を実施し、37.5度以上の者は再度、接触型体温計により検温し、37.5度以上あった場合※1は、迅速抗原検査を実施。
陽性反応が出た場合は、オンラインで医師が診察を行い、新型コロナウイルス感染症の診断がなされた場合は受験を認めない。試験中であっても、受験を停止させるため、その指示に従うこと。それ以外の場合は、別室で受験させる。
※1 37.5度以上の発熱がない場合においても、せきなどの症状を認めた受験者は同様の取り扱いとする

〇濃厚接触者※2であっても、試験当日に無症状であるなど※3の条件を満たせば、別室での受験を認める。
※2 保健所から濃厚接触者に該当するとされた者で、14日間の健康観察期間中に受験日が重なる受験者。なお、過去2週間以内に、政府から入国制限、入国後の観察機関を必要とされている国・地域等から日本に入国した者を含む。
※3 以下の条件を満たすこと
ア)初期スクリーニング(自治体等によるPCR等検査)の結果、陰性であること
イ)受験当日も無症状であること
ウ)公共の交通機関を利用せず、かつ、人が密着する場所を避けて試験場に行くこと
エ)終日、別室での受験になること

〇試験当日に体調不良などにより受験できなかった者については、これまでと同様に追加試験は行わない。

 濃厚接触者は、「公共の交通機関を利用せず、かつ、人が密着する場所を避けて試験場に行くこと」とあるが、自動車免許がない場合は歩くのか、それとも自転車を使えということなのだろうか……かなり、厳しいルールである。

■2日間で400問が出題される、医師国家試験

 ちなみに、2020年度は1万140人が医師国家試験を受験し、合格者は9341人、合格率は92.1%で約800人は不合格だった。合格すれば、研修医として医療の現場に立てるが、不合格になった場合は、医師国家試験予備校に通うなどして、翌年、再チャレンジする。

 医師国家試験専門予備校「TECOM」の米岡理塾長は、こう話す。

「医学部現役生も学んでいますが、塾には既卒生も多いです。コロナ禍が騒がれ始めた昨年の春以降、感染が広がるので通塾ではなく自宅学習ができるように、講義をウェブ配信し受講できるようにしました。塾に足を運んでいた学生に対しても、今年1月以降は在宅学習を促し、昨年末までにすべての講義を修了。例年よりも、医師国家試験対策講義を前倒しにして進めました」

 医師国家試験は選択形式で、16年度までは3日間で500問出題されていたが、17年度からは2日間で400問になった。問題数は少なくなったものの、内容は年々難易度が増しており、グローバル化とともに英語の問題も出題されるようになっている。

 今回、新型コロナウイルス感染症の広がりで、不安に思う学生も例年より多くいたことだろう。
「普段から塾では、メンタル面をサポートできる態勢を整えています。しかし、コロナへの不安だったり、感染の怖さから自宅に引きこもって1人で勉強したりすると、どうしてもモチベーションは下がります。また、スマホやテレビに動画など、家だとどうしても誘惑は多くなるもの。オンラインでの面談など、生徒とは例年よりも多く接する機会を設けました」(米岡塾長)

 医師国家試験会場での、対応に関してはどう思うのか。

「予想はしていました。例年だと会場での検温がなかったため、インフルエンザなどにより発熱していても、無理して受験した人もいたかもしれません。しかし、現在はコロナ禍。オンライン診療まで実施するのは逆に、対応としてはいいと思います。1月30日、31日に歯科医師国家試験が実施されましたが、会場での検温は大きな混乱もなく、受験生はスムーズに入場できていたように見受けられました」(同)

■どうしても、県をまたいだ移動が必要になる医師国家試験

 医師国家試験の会場は全県すべてにあるわけではなく、北海道は1カ所、東北地方では宮城県の1カ所しかない。
「コロナ禍の中、受験生に不利益がないように、厚生労働省も手を尽くしていると思います。令和3年の受験会場において感じるのが、試験会場の多さ。例年だと2カ所だった東京が、今年は4カ所の会場を設けています。大阪も3カ所になり、中国地方では広島県と岡山県で試験場を用意しています。密にならないように、人数制限をしたうえで受験してほしいという、国の方針が生かされていると思います」(同)

(試験会場、北海道地方1カ所/東北地方:宮城県1カ所/関東地方:東京都4カ所/中部地方:石川県2カ所、新潟県、愛知県各1カ所/関西地方:大阪府3カ所/中国地方:岡山県、広島県各1カ所/四国地方:香川県1カ所/九州・沖縄地方:福岡県2カ所、本県、沖縄県各1カ所)

 受験には、雪などによる交通機関の不通なども考えて、2日前から試験会場近くのホテルに宿泊する人も多い。新型コロナウイルス感染症に罹患しないように、細心の注意を払って医師国家試験に臨んでほしい。

(AERAムック編集部・長谷川拓美)