「これまでのネットでは、面白い文章を書けるテキスト系の人や、顔を出して写真や映像を編集する動画系の人が主役でした。文章を生業にする人や、芸能人が強かった。でも、クラブハウスにはおしゃべりという人類最大のエンタメ要素が詰まっていて、ハードルが低いんです」
アプリを開けば、「ルーム」と呼ばれる無数の部屋が現れる。その一つひとつに会話を進行するモデレーターや、話している人を示すスピーカーのアイコンが並び、まるでラジオを聞いているようなまったりとした空気感に包まれる。リスナーが話したいときには「挙手」機能で参加。ルームは誰でもつくれ、ユーザーの出入りも自由だ。
■最後のフロンティア
日を追うごとに著名人の登録も増えている。ある部屋を訪ねたときには、筆者のアイコンを囲むように指原莉乃さんや若槻千夏さん、冨永愛さんらのアイコンが並んだこともある。街中で芸能人を見つけたかのごとく、気持ちが高まった。
出身地や職業、好きな音楽などをプロフィル化することから始まったフェイスブックに、今の気持ちをつぶやくツイッター。とっておきの一枚を載せるインスタグラムに、音楽に合わせてテンポよく踊るTikTok。もはや秒進分歩のようなネットの世界における「最後のフロンティア」として躍り出たのが、クラブハウスだったのだ。
ネットサービス「ガイアックス」の重枝義樹ソーシャルメディアマーケティング事業部長は、その歩みをこう分析する。
「テキストや動画を通じたSNSの勝ち組が決まるなかで、コミュニケーションを目的に集まれる音声メディアの勝者はこれまでにいませんでした。そのフロンティアをどこが取るのか注目される中で、大手ベンチャーキャピタルがクラブハウスへの投資を決めドカンときました」
クラブハウスを運営する米西海岸のスタートアップ「アルファ・エクスプロレーション」の創業は2020年2月。1年経たずして大躍進を遂げた。(編集部・福井しほ)
※AERA 2021年2月15日号より抜粋