ソーシャルメディアは進化を続けてきたが、日本でのクラブハウス人気はまだ始まったばかり。今年は「音声SNS元年」になるのか(撮影/写真部・高橋奈緒)
ソーシャルメディアは進化を続けてきたが、日本でのクラブハウス人気はまだ始まったばかり。今年は「音声SNS元年」になるのか(撮影/写真部・高橋奈緒)
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AERA2月15日号掲載
AERA2月15日号掲載

 不思議なほど夢中にさせる魔力があり、「時間泥棒」と例えられるほどの熱狂ぶり。この2週間で話題をさらった「クラブハウス」。SNSのフロンティアを制するか。AERA 2021年2月15日号から。

【イーロン・マスクに河野太郎大臣も… クラブハウスの10日間を一気に振り返る!】

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 おそるおそる部屋に踏み入ると、そこには20年以上会っていない友達の顔があった。別の部屋を覗けば、今度は米シリコンバレーに住む知人が入ってきた。

「これは革命が起きるぞ」

 文章やイラストなど様々な作品を配信するウェブサイト「note」プロデューサーの徳力基彦さんは、米国発の音声アプリ「Clubhouse(クラブハウス)」に登録した日に、そう確信した。

「ツイッターやフェイスブックのつながりは、一方通行になることも多かった。このアプリでは、家に居ながらにして立食パーティーのような双方向のつながりが生まれます。すっかりハマって、クラブハウスに住むのを楽しんでいますよ」

 時価総額1千億円超──クラブハウスについての報道が1月下旬に駆け巡るや否や、情報感度の高い起業家らが一気に飛びついた。数日後には起業家を通じて、タレントの小嶋陽菜さんや田村淳さんらが登録。ツイッターに投稿したことで、一般層にも広がった。

■「取り残される」不安

 熱狂の一因が「招待制」だ。ユーザーが他のユーザーを「招待」することで利用できる仕組みを導入。そう聞けば、立ち上げ当初のミクシィを思い浮かべる人もいるだろう。サービス自体はざっくり言えば「音声を使ったSNS」だが、それらの録音はご法度。さらに現時点ではiPhoneなどの基本ソフトiOSでしか使えない。そういったエクスクルーシブな環境も、情報がつかめず取り残されることへの恐れを意味するFOMO(fear of missing out)を感じさせる設計になっている。

 大学時代の友人経由で招待を受け取った男性(25)は、興奮気味に話す。

「クラブハウスのプロフィルには登録した日が表示されるので、1月中に入れたのはちょっとしたステータスです」

 日付のほか、誰に招待されたのかも記されるため、自分を招き入れた「親」をさかのぼることもできる。徳力さんは、今回のクラブハウスの熱狂を「ツイッターの1年分を10日で駆け抜けた」と評し、こう続ける。

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