甚大な被害を及ぼした東日本大震災だが、ここ10年くらいを見てみると、日本各地でいろいろな災害が起こっているのがわかる。ある専門家は歴史や遺跡などから考察し、過去にも同じように天変地異が続いたことが日本にはあったことを指摘する。
宮城県多賀城市にある東北学院大学工学部の教授、河野幸夫さんは『歴史としての東日本大震災』(刀水書房)の共同執筆者。水理学が専門で、水撃圧による配管破断を研究し、津波に関心をもつようになった。
その研究はかなりアクティブだ。海底遺跡を調査するため、50歳手前でダイビングの免許を取得した。
「オーストラリアのケアンズのサメがうじゃうじゃいる海で特訓をしました。松島湾では14年間で100回ほど潜っています。最初は小さな船で行き、スキンダイビングで死ぬ思いをしました。いつもこれが最後だと思って潜っています。私の研究室の学生は、みな潜りますよ」
かつて松島湾南方約10キロほどの地点に大根(おおね)島があり、貞観(じょうがん)地震(869年)で海底に沈んだとされる。
「ダイビングを重ね、水深10メートルから15メートルの地点で、明神の祠を二つ発見しました。階段のような遺跡、木の化石もあった。貞観地震で島が沈んだことはまぎれもない事実です」
河野さんは仙台平野の掘削調査や炭素測定も行い、地震の痕跡を調べてもいる。日本経済新聞に寄稿した「海底遺跡が語る貞観地震」(2011年8月16日付)に書いている。
「自ら確かめた海底遺跡、地層と古文書の記述を突き合わせると、現代の地震・津波との強い関連性が見えてくる。日本列島では今、まさに9世紀に起きた天変地異が繰り返されている」
2000年以降に起きた三宅島の噴火、中越地震、岩手・宮城内陸地震、そして東日本大震災……。
「9世紀に発生して今世紀に起きていないのは富士山や鳥海山の噴火ぐらいだ」
※週刊朝日 2013年4月19日号