だが、国際オリンピック委員会(IOC)はなぜか森氏の辞任ではなく続投を求めた。だらしないことだが、日本政府もJOCも森氏に辞めるべきだと言わなかった。

 ところが、国際的な強い批判を浴びて、森氏続投では五輪が実現できないと判断したのか、IOCが「森氏の発言は絶対的に不適切で、IOCの誓約に反する」と強く表明した。すると、それまで発言をあいまいにしてきた日本の有識者たちが次々に森氏批判を始め、トヨタなど多くの企業が「森氏の発言は不適切」と批判した。

 IOCの表明後に、国内で慌てて森氏批判が氾濫するのは、何を今になって、という忸怩たる思いもあるが、こうした批判氾濫の中で、森氏自身が辞意を固めたと知った。忸怩、忸怩ではあるが、これは国際社会での「女性差別の極端な国」との認識を打ち破る、またとないチャンスではないか。

 日本は、男女格差の国別ランキングで世界153カ国中121位であり、女性の衆院議員は9・9%でしかない。企業で管理職・役員を務める女性も極めて少ない。

 わが国としては、世界中から批判された何とも恥ずかしい森氏問題を逆手にとって、極端な女性差別の構造を抜本的に改革すべきで、私は森氏の後継は女性にすべきだと考えている。菅内閣中に女性国会議員3分の1以上というクオータ制を実現し、企業の女性役員もやはり3分の1以上にすべきである。

週刊朝日  2021年2月26日号

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 

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