「列車での人の移動が難しいなか、ものを運ぶということです。特に、新幹線で貨物列車を走らせる貨物輸送を真剣に考えるべきだと思います。東海道新幹線のような過密ダイヤでは昼間は無理かもしれないけど、北陸新幹線や九州新幹線は余裕がある。東海道新幹線も、深夜は走っていないわけですから、輸送上の余力はあるはずです」

 一方で、地方の窮状も深刻だ。マイカーによる生活が定着し人口も減少する中、地方鉄道は次々と姿を消している。戦後76年、北海道から九州まで、400近い路線が廃止となった。今年も、JR北の日高線、鵡川(むかわ)─様似(さまに)間(116キロ)が3月で廃線となる。廃止区間は日高線全体の8割にあたり、15年1月の高波被害で不通が続いていた。

「直線で、片方が海で、片方は馬が見られる。そんなきれいな線が日高線なんですよね」

 と様似町に生まれ育った女性(73)が自慢するように日高線は、車窓から太平洋の大海原とサラブレッドが放牧される長閑な牧場風景が広がる、北海道らしいおおらかな風景が連続する絶景路線だった。だがJR北は、復旧にかかる約100億円は捻出できないとして廃線を決定。いま不通駅間は代行バスが走っているが、4月からは廃線の代替措置として路線バスが運行する。

 鉄路の存続を求めてきた「JR日高線を守る会」代表だった、新ひだか町在住の村井直美さん(51)は、議論は住民不在のまま、「『最初から、赤字だから仕方がない』と廃線ありきで進んでいった」と批判する。

「バスになっても赤字は変わらないどころか、さらに不便になるので、北海道で廃線になった地域の公共交通はこれまでもいずれ消滅しています。ここもすでに衰退がはじまっています」

■鉄道は社会的インフラ 地域を守るには

 地方で鉄道の採算性が悪化した背景には、国の交通行政にも問題がある。ヨーロッパでは、鉄道は収益事業とは見なされず、公的な支えが必要な社会インフラと位置付けられる。自治体などが車両や線路を維持管理し、鉄道会社は運行に専念する「上下分離方式」が常識だ。しかし、日本では鉄道は独立採算制が原則で、「黒字」か「赤字」かで判断され、赤字になった鉄道は次々と切り捨てられていった。

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