尿酸値が高い状態が続くと、腎臓との関連が気になるところだが、将来の腎臓の病気につながるかどうかは明確なデータはなく、現在も研究が続けられているという。

 一方、腎機能検査は特に高齢者にとって重要になる。岡田医師によれば、eGFRは100くらいあるのが理想という。

 90以上であれば健康、60~89は「軽度腎機能低下」、30~59は「中等度腎機能低下」、15~29は「高度腎機能低下」、15未満は「腎不全」だ。

 高齢者がぐったりして元気がなくなっている場合、気をつけたいのが「心不全」「貧血」、そして「電解質」のナトリウムやカリウムの異常だという。

「高齢者はどちらかが高くなったり、逆に低くなりすぎたりすると、命に関わることがある。栄養不足と腎機能の低下が原因です」(岡田医師)

 栄養状態が悪くならないように気をつけたい。

 最後にがん腫瘍(しゅよう)マーカー検査について。この検査は、がん細胞がつくり出す物質(がん胎児性たんぱく、糖鎖抗原など)の血液中の数値を測り、がんの有無を見つけるというもの。主なマーカーに、AFP(肝臓がん)、CEA(消化管がんなど)、CA19-9(膵臓[すいぞう]がんなど)がある。だが、がんの早期発見には寄与していないという。

 岡田医師が説明する。

「前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAについては学会が推奨していますが、前立腺がんは非常に進行が遅く、がんがあっても天寿を全うする人が多いのです。PSAは米国でもブームになって、大勢の人が受けましたが死亡率は変わらなかったんです。むしろ手術をした副作用で亡くなる人が多かった。早期発見のメリットはなかったのです」

 これまで見てきたように、重要な検査がある一方で、「正常値」が厳しすぎるなど、あまり神経質にならないほうがいい検査もある。和田医師がこう注意を促す。

「検査項目を増やせば増やすほど、異常値が出るのは当たり前です。まったく異常値のない人なんて、ほとんどいません。血圧や血糖値も『正常値』よりも、自分の体にとって楽な値というのがあるものです。超高齢化社会ではむしろ検査の異常値に寛容にならなければならないはずです。そろそろ“正常値信仰”とは決別するべきでしょう」

 血液検査では見つからない病気や、体の不調はたくさんある。検査の数値が「正常値」であれば大丈夫と思い込んでしまうのも、逆に落とし穴といえるのである。(本誌・亀井洋志、秦正理)

週刊朝日  2021年2月26日号より抜粋

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