弟であるアキ・カウリスマキ監督とともに北欧を代表する名匠ミカ・カウリスマキ監督の新作「世界で一番しあわせな食堂」。国連が発表する「世界幸福度ランキング」で3年連続1位を獲得している森の国フィンランドの景色の美しさも見どころだ。
フィンランド北部の小さな村にある食堂へ、上海から料理人チェン(チュー・パック・ホング)とニュニョ(ルーカス・スアン)の親子がやってくる。世話になった恩人を捜していると言うが、周りには知る人は誰もいない。食堂を経営するシルカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)は、チェンが食堂を手伝う代わりに、恩人捜しに協力することに。
なかなか思うように進まない恩人捜しの一方で、チェンが作る中華料理は、ガイドたちの間でたちまち評判となり、食堂は観光客で大盛況。最初は訝しがっていた地元の常連客もその料理の虜に。やがてシルカや常連客とも親しくなっていくチェンだったが、観光ビザの期限が迫り、帰国する日が近づいてくる──。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
美食に縁がなさそうなフィンランドで中国人料理人が腕をふるい、料理の美味しさで周囲を変えていく。食べる物も人間関係も。気持ちよく進むドラマはフィンランドの生活や子供たちの姿も細やかに伝えて穏やかな気分になる。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
食に無頓着な村人たちに、中華料理の医食同源の効果が魔法のように映るあたりが実にユーモラス。グローバル化や分断を念頭に置いた心温まるドラマには、世界を飛び回ってきたミカ監督ならではの視点が反映されている。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
食べ物で幸せになる映画はだいたい生まれ育った国と全く違う文化をもつ国へ行ってそこで魅了されて幸せになる。でもこの映画は行った国に自分の料理を伝えたのが良かった! 微笑ましくて料理も人も良い味出している。
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
ミカ・カウリスマキ監督らしいユーモアが堪能できる一編。中国人がフィンランドの食堂を手伝う様子が面白い。フィンランドの景観と様々な食事が楽しめるのに加えて、ゆっくりと進行していくロマンスが味わい深い。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年2月26日号