週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「食道がん手術」の解説を紹介する。
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食道は、長さ約25センチの筒状の臓器で、喉と胃をつないでいる。食道壁は多層構造になっており、食道がんの多くは、内側の粘膜の表面に発生する。進行すると徐々に粘膜の深いところへ広がり、食道周囲にあるほかの臓器に転移する。また、頸部、胸部、腹部には多くのリンパ節があり、それらにも転移しやすい。
食道がんの治療は、粘膜のどの深さまで達しているか、他臓器への転移の有無などによって異なる。ここでは、がんが粘膜下層に浸潤しているが、リンパ節転移がないステージIの治療の流れと選択肢について解説する。
がんが粘膜下層に浸潤するI期では、治療の中心は手術であるが、化学放射線療法という選択肢もある。2019年に多施設共同試験JCOG0502の結果が発表され、I期の5年生存率は両者でほぼ同等であった。
しかし、同試験で治療後に再発や死亡するなどの割合は、化学放射線療法よりも手術のほうが10%程度少なかったと説明するのは、愛知県がんセンター病院の安部哲也医師だ。
「I期では、手術と化学放射線療法それぞれの治療成績や利点、欠点をきちんと説明したうえで、患者さんに選択してもらいます。印象では、経過中に再発のリスクを避けたい人は手術を、手術を避けて食道を温存したい人は化学放射線療法を、それぞれ約半々の割合で選択されます」
国立がん研究センター中央病院の大幸宏幸医師は、同試験では10年生存率は手術のほうが高い傾向にあり、I期では5~10年の長期生存も目指せるという。