ドラマで描かれている一部始終が、女性に発言をさせず、男性だけで決定し、人事で強引に政治をすすめてきた今の自民党に通じる悪政と、災害は非常に相性が悪いことを示唆するのであった。
2月13日、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震で東京も揺れた。ちょうど「アウトブレイク」を見ていて、私はいったん立ちあがり、玄関と窓のカギを外してから、長い揺れの中でまたテレビの前に戻ってドラマを見続けた。10年前の地震のときは、家の中を立つことすらできなかった。そして本当に怖いのは、地震の最中ではなく、その後に起きることであることを、あの地震で実感したのだ(東日本大震災以前の私は、他の人が気がつかない程度の揺れでも自分の心臓の音が聞こえるほどに揺れを恐れていたというのに)。案の定、今回の地震の後に差別をあおるデマが流れ多くの人を絶望にさらし、そして福島第一原発1、3号機の原子炉格納容器で水位が低下している。
もう限界ではないか。災害リスクワーストの国に生きているのならば、密室の政治、オトコしかいない政治、利権の政治、身内に甘い政治は限界なのではないか。
「アウトブレイク」では、先住民のイヌイットが差別され、貧困と性暴力にさらされる女性が真っ先に命を落とす。ウイルスは差別しない、だけれど社会差別によって命の重さが変わることは、もう国際常識レベルで分かっていたことなのだ。だからこそ平時にジェンダー格差に取り組むことが大切だったのだ。そしてきっと今からでも遅くないと思いたい。阪神・淡路大震災から26年、東日本大震災から10年を経て「災害女性学をつくる」という取り組みをしているフェミニスト学者たちがいることに希望を持ちたい。そして改めて災害とジェンダー、こういう視点でパンデミックに向き合える政治家がいてほしい。誰かいるか。
■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表