突然発作を起こし、命にかかわることもある危険な病、「脳卒中」。特に要注意なのは、一人で生活する「おひとりさま」だ。周りに気付いてくれる人が少ないため、迅速な措置が難しくなる。おひとりさまの脳卒中の予防について、専門家に話を聞いた。
そもそも、おひとりさまのライフスタイルは、脳卒中を引き起こす高血圧や糖尿病といった生活習慣病になりやすい。家族持ちに比べると高塩分、高脂肪、高カロリーになりがちな外食や、スーパーの総菜を利用するケースが多くなることが一因だ。よほど気をつけないと、つい自分の好きなメニューばかり選び、食生活が偏ってしまう。また自炊でも、多くの品数を一度に作るのはなかなか難しいもの。身近に体調を気づかったり、注意してくれる家族がいないことも大きい。
日本保健医療大学の栗盛須雅子教授が特に心配しているのは、男性のおひとりさまだ。
「男性の場合は食生活や運動不足もさることながら、自宅での飲酒もセーブする人がいないため深酒気味になり、脳卒中のリスクを高めることが考えられる」
また、配偶者と死別すると、男性のほうが女性より死期を早めがちだということもわかっている。栗盛教授は言う。
「男性は妻に頼り切るのではなく、日ごろから自立するように心がけておくことが大事。また、妻を亡くした男性には、より手厚いサポートが必要ということも言えるでしょう」
一方、女性でも「家族が多いほど障害を持つ割合が少なくなる」という調査結果がある。やはり孤立しないことが健康にいい影響を及ぼすようだ。
「単身者は家族のある人より、意識して近隣や友人とのネットワークを構築していく必要があります」(栗盛教授)
しかし、それこそがおひとりさまには難しい、という声もあろう。栗盛教授が手っ取り早い方法として勧めるのが、同窓会やクラス会にこまめに出ることだ。
「それまでの付き合いでお互いの背景がある程度わかっていますから、ネットワークを作るにも無駄なエネルギーを使わずに済みます。『結婚していないから』とか『成功していないと行きづらい』と躊躇してしまいがちですが、思い切って行ってみると、思わぬ縁で人や仕事を紹介してもらえることもあります。医師や弁護士になった同級生や先輩、後輩など、いざという時の相談相手がいると思えば安心にもつながる。病気で倒れた時にとどまらず、生涯を豊かにするネットワークが築けます」
※AERA 2013年4月22日号