と評価をすれば、先のニッセイ基礎研の中嶋上席研究員も、
「現役の賃金が下がっているのですから、高齢者の方にもぜひ痛みを分かち合ってほしい」
抑制自体は進まなかったものの、抑制の「仕組み」は着々と整いつつある。では、具体的な年金額はどう動きそうか。
冒頭で触れたように、コロナ禍の影響が出るのは22年度から。後ずれになるのは、本来の改定に使う賃金変動率は2~4年度前の平均をもとにするためだ。経済が悪化した20年度の賃金変動は22年度改定に出る。
「そして使われ始めると、3年間使われます。20年度の数字は、22~24年度の年金額に影響を及ぼします。ジワジワと3分の1ずつ効いてくるのです」(中嶋上席研究員)
こうした仕組み自体、高齢者の生活を急変させないための工夫と見られるが、それはともかく、肝心の引き下げ幅はどうなりそうか。
中嶋上席研究員の試算では、毎月勤労統計の20年4~11月の平均は「マイナス2%」。これを今年3月までの20年度全体の賃金変動だと仮定すると、22年度は「物価変動率マイナス0.1%、賃金変動率マイナス0.8%」となった。年金額は「マイナス0.8%」の引き下げになる。国のモデル世帯(夫婦2人)の21年度の年金額は「22万496円」だから、「1763円」下がってしまう。
しかし、20年度のこうした数字でさえ、2回目の緊急事態宣言で経済活動が停滞して賃金の下振れが進むかもしれず、どうなるかはまだわからない。さらに心配なのは21年度の動向だ。第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは、低迷が続きそうだと言う。
「春闘で賃上げとはならないでしょうし、今年夏のボーナスも冬に続けて良くないとみています。20年度ほどではないにしても、21年度もマイナスになる可能性があります。賃金は景気に遅れて動く『遅行指標』なので、新型コロナの不安が解消して景気が上向いても、すぐには上がりません。22年度にようやく回復していくとみるのが自然ではないでしょうか」