生田:舞台は自分をさらけ出さなければならない場所です。幕が開いている間、頭のてっぺんから爪の先まで、常に見られている。芝居のうまさとか声がいいとかだけではなく、その人が生きてきた時間や人間の厚みみたいなものがいやでもにじみ出る。毎回役と向き合って、どう乗りこなすか、どう解釈するか、悩みはつきないです。
やったことに点数がつくわけじゃないし、常に「これでいいのかな」と思いながら進んでいる。毎回、新しい壁が現れて、破ったと思ったらまた、の繰り返しです。
——舞台は演じ手と受け取る側がいて成立する「空間」。その空間を作っている空気を共有する感覚がたまらないのだと笑う。
生田:役、スタッフさん、共演者の皆さん。新しい舞台のたびに出会い、お互いを好きになってひとつのものを作り上げて、「またね」と別れていく。達成感と同時に寂しさもあって、でも刺激的です。いろんな人に出会えるし、役を通していろんな人生に出合えますから。
——昨年はコロナ禍で出演する舞台が中止になった。その状況は、俳優という仕事を見つめ直すきっかけになったという。
生田:舞台が中止になって自分たちも悔しい思いをしたし、お客さんにもさみしい思いをさせてしまったことと思います。僕、東日本大震災のときもそうだったんです。大阪で蜷川幸雄さんの舞台をやっていて、上演を続けるかどうかという状況だった。でも来てくれている方がいたから、舞台を続けたんです。どんなに大変な状況でもお芝居を観てくれる人がいる。そういうときに、常に「いる」ということが僕らの使命だと思っている。“不要不急”という言葉のなかに僕らも入っているとは思うんです。一方で、「いや、でも絶対“不要”じゃねえよな」という気持ちもあって。必要だからこそ、どんなことがあっても残り続けてきた職業なんだと思うんです。
——いつもなら当たり前すぎて気づかなかったことに気づいた一年でもあった。