橋本聖子氏が7年前、高橋大輔選手にキスをしたとされる問題がくすぶり続ける。見えてくるのは性の多様性についての議論が深まらない国内の現状だ。同性愛を公表し、LGBT当事者の支援に取り組む石川大我参院議員に聞いたAERA 2021年3月8日号の記事を紹介する。
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「軽率な行動について、当時も今も深く反省しています」
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長に選出された橋本聖子氏(56)は厳しい表情でこう語った。就任会見での「反省の弁」は記者から「7年前にセクハラ、パワハラという報道もあり、会長にふさわしくないのでは、という声もある」との質問を浴び、吐露した言葉だ。
橋本氏は自民党参院議員で日本スケート連盟会長、選手団長も務めていた2014年のソチ五輪閉会式後の打ち上げパーティーで、フィギュア男子代表の高橋大輔さん(34)に抱きつき、キスをする場面が写真とともに週刊誌に報じられた。
■曖昧幕引きに残る疑問
橋本氏は当時「キスを強制した事実はない」、高橋さんも「セクハラ、パワハラがあったという感じは一切ない」と説明。日本オリンピック委員会(JOC)も不問に付したが、あいまいな幕引きになったことでかえって疑惑の声はくすぶり続けた。
「スポーツ界に気脈を通じた政治家と一選手という、ハラスメントからも逃れにくい構図で、海外から見れば一層あり得ない行為に映るはずです」
こう話すのは石川大我参院議員(立憲民主党)だ。
自民党の竹下亘元総務会長は橋本氏が会長に就任した2月18日、過去の行為について「スケート界で男みたいな性格なので、ハグなんて当たり前。セクハラと言うのはかわいそうだ」と語り、その後、事務所を通じ「男みたいな」とした発言は「正確には『男勝り』と言いたかった」と訂正した。
この発言について、同性愛を公表し、LGBT当事者の支援に取り組む石川議員は「橋本会長が行ったのは口へのキス。ハグと口へのキスでは意味が大きく違う」と指摘し、こう訴える。