政府は早く幕引きを図りたいのだろうが、野党は菅首相が起用した内閣広報官が1日で7万円超の接待を受けていた問題をてこに、とことん責任を追及する構えだ。

 ところで、総務省とかかわりの深い自民党の国会議員たちを取材すると、週刊文春に情報を提供したのは、どうやら東北新社の職員のようである。正剛氏の度重なる接待攻勢は、衛星放送事業を有利にしてもらうためだったのだろうが、父親に迷惑がかかる、父親が困った立場に追い込まれる、とは考えなかったのか。

 先の自民党議員たちによると、菅首相には3人の息子がいるのだが、正剛氏は、菅首相と連絡できる関係にはないようだ。当然ながら、接待攻勢の事実を知れば、菅首相は強くしかりとばし、やめよと言ったはずである。あるいは正剛氏は、接待攻勢を続けなければ、自分が東北新社にいられなくなる、とでも思っていたのであろうか。

 いずれにしても、総務官僚たちが違法の接待攻勢を断れなかったのは、内閣人事局制度の弊害の実例である。菅首相はこの制度をただちにやめるべきである。

週刊朝日  2021年3月12日号

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 

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