松重:アハハハ。でも、アイドル君はアイドル君で、小さいころからそういう中で揉まれてきてるんで、すごいものを出すってことが蜷川さんはわかってたんです。僕らのような雑草が持てない輝きみたいなものをアイドルに見つけてパッと焦点を当てるので、すごいと思うんです。
林:でも、そうは言いながら「この子たち、10年後はどうなってるかな」と思いながらやってるんじゃないですか(笑)。チラッと感じちゃうんです、小さい毒を。だからおもしろいんですけど。
松重:ハハハ。物事に対しての穿(うが)った見方というのは、僕の中にずっとあるんです。それを役者としても生かしていると思います。
林:人間のいろんな感情を演じるんですから、きれいごとだけじゃ務まらないお仕事だと思いますよ。それでこそ良い俳優さんなんだと思います。今度はぜひ長編をお書きになっていただきたいです。
松重:ぜひ挑戦してみたいですね。
(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)
松重豊(まつしげ・ゆたか)/1963年生まれ、福岡県出身。明治大学文学部在学中から芝居を始め、86年に蜷川スタジオに入団。2007年の映画「しゃべれどもしゃべれども」で第62回毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。12年、「孤独のグルメ」でドラマ初主演。19年、「ヒキタさん!ご懐妊ですよ」で映画初主演。20年放送のミニドラマ「きょうの猫村さん」で猫村ねこを演じて話題に。「深夜の音楽食堂」(FMヨコハマ)では、ラジオパーソナリティーも務めている。著書に『空洞のなかみ』(毎日新聞出版)。
※週刊朝日 2021年3月12日号より抜粋