松重:僕は高校のころに「ビックリハウス」や「宝島」を見て、今でいうサブカルチャーの世界に憧れて、東京に出てきて、今おっしゃった方々の芝居をブア~ッと浴びて、「これはおもしろい」と思ったんです。だから出発点はそこなんですよ。「既成のものをどうこわし、新しく何をつくっていくんだ」ということで、いろんな人たちが出てきましたよね。そのとき、たまたま別の大学に三谷幸喜さんがいて、自主映画の現場で会って、「東京サンシャインボーイズ」の旗揚げに参加したりしたんですけど、僕は当時、三谷幸喜には才能がないと思ったんです。

林:エ~ッ!(笑)

松重:ウェルメイドプレイといって、起承転結がはっきりとあって、わりとわかりやすい芝居を指しますが、当時、そうしたものの地位は低かったんですよ。唐十郎さん、寺山さんという2大巨頭がいらして、難解というか、「戯曲を一回読んだだけでわかるわけねえだろ」という芝居のアンチテーゼとして、三谷さんはわかりやすいウェルメイドプレイをやったんですね。だけどそのころ三谷さんは異端児で、僕はついていく気はなかったです。

林:へぇ~、そうなんですか。

松重:だけど三谷さんは今、テレビと映画と舞台を縦横無尽に駆けめぐってるんで、あのころ僕が「才能がない」と思ったのは大間違いですけど、今も仲良くしてますよ。僕が本を出すことも言ってなかったんですけど、彼は発売翌日に感想を連絡してくれたんです。

林:まあ、いい人じゃないですか。

松重:お互いハタチそこそこ、何者でもないときに同じ釜のメシを食ってた感覚があるので、ぜんぜん違うところでやってますけど、常に僕の励みになっています。

林:蜷川さんとはうまくいってたんですか。

松重:蜷川さんはいい意味で俗物的なところがあって、アイドルをキャスティングしておもしろい舞台をつくったりして、サブカルチャー的なものと外に出るカルチャーのものとをクロスオーバーさせたことが、あの方の功績だと思うんです。そこで揉まれたのが、僕にとって非常によかったと思いますね。

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